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宇宙港 No.947

1969年7月、人類が初めて地球から38万km先の月に降り立った。TVで世界中が見守る中、アメリカの宇宙船アポロ11号から切り離された着陸船イーグル号から2人の飛行士が月面“静かの海”に降り、21時間ほども滞在するという歴史的な出来事だった。

それから半世紀以上経ったいま、宇宙港の開発計画が各国で加速している。飛行機が空港から離発着するように、宇宙に行くためにも拠点が必要なのである。宇宙港は文字通りスペースポートともいわれ、ロケットなどを打ち上げる施設のこと。宇宙観測などの需要増に伴って人工衛星の打ち上げ数は増加しており、2030年には年間1000機にもなると予想されている。しかし射場の数は不充分で、アジアではシンガポールとマレーシアが宇宙港計画を打ち出している程度だ。

日本では北海道大樹町、和歌山県串本町、大分県国東市などが適地として動いている。宇宙港はどこにでも建設できるわけではない。垂直・水平打ち上げに適した射場として、まず地理的な条件が重要視される。緯度、方位角の自由度、安定した天候条件、空域の混雑度合いなどが考慮される。ロケットは打上げ時のエネルギーを節約するために、地球の自転を利用するとのこと。そのため、打ち上げる方向は東向きで(衛星の種類によっては南向き)、よって東に開けた平坦な土地が必要である。打上げ時には発射音や震動が響くため、当然都市部など人口密集地はNGである。

こうした物理的な条件のほかに重要なのが地域住民の理解である。北海道の大樹町は帯広市の南にある人口5400人ほどの小さな町だが、宇宙に関する熱量は並々ならぬものがある。宇宙ベンチャーにも積極的で、36年前の1985年に宇宙産業誘致として「宇宙のまちづくり」をスタートさせ、官民あげて夢を追い続けてきた歴史がある。2013年にはJAXA(宇宙航空研究開発機構)が町の多目的航空公園での大気球実験で高度世界記録を更新。世界的な機関を通じて太陽系の小惑星に「Taiki(タイキ)」の名がつけられているほか、2021年4月からアジア初となる民間にひらかれた本格的な宇宙港「HOSPO(ホスポ)」(北海道スペースポート)」を本格稼働させている。

宇宙産業の市場は2040年に120兆円の膨大な規模になるという報告もある。ビッグデータによる地球観測、高レベル通信サービス、天候・災害予測、GPS活用、軍事への応用など将来性は限りなくある。日本が遅れを取ってはならない分野だろう。