日刊紙「信用情報」で人気のコラムを毎週お届けします

トウモロコシの季節 No.877

地方によって呼び名が違う植物は多いが、「トウモロコシ」の多彩さは珍しい部類だろう。キビ(北海道、長野、高知ほか)、キミ(青森、秋田、岩手ほか)、トウマメ(新潟、長野ほか)、コウライ(岐阜、福井、三重、滋賀ほか)、ナンバン(愛知、京都、山口ほか)等々、ネットには48通りも載っていた。

そもそもトウモロコシという名前自体、ヘンなのだ。16世紀にポルトガルから日本に伝わったが、それ以前に、中国から伝わり「モロコシ」(中国の別名でもあった)と名付けた穀物がすでにあった。そこで今度は、当時「舶来」を意味した「唐(=中国)」の字を頭に付けて「唐のモロコシ」 = 「トウ・モロコシ」になったらしい。

トウモロコシは、雄花・雌花が同じ株に別々に咲く「雌雄異花」である。株のてっぺんでススキの穂状に咲くのが雄花。その雄蕊(おしべ)から散り落ちた花粉が、トウモロコシ独得の「ヒゲ」に付着する。あのヒゲは、実の一個一個から伸びた絹糸と呼ばれる雌蕊で、そこで受精する。だから、トウモロコシのヒゲの本数とズラリと並んだ実の数は同数なのだ。お疑いなら数えてみるとよかろう、約600本(個)もあり少々大変だが。

トウモロコシと言えば、これからの季節、札幌・大通公園のトウキビ屋台が観光客に人気である。「観光客に」としたのは、市民はあまり食べないからだ。「だって高いもん」と、弊社に4人いる北海道出身者が尻込みした値段は、1本300円だ。

「しんとして 幅廣き街の秋の夜の 玉蜀黍(とうもろこし)の焼くるにほひよ」 石川啄木が札幌に滞在中に詠んだ歌碑と像が、大通公園西3丁目の緑陰にある。大通公園でのトウキビ売りは明治時代後半に現豊平区平岸地区の農家が始めた。増え過ぎて公園や道路を占拠するようになったため、市は昭和40年に排除したが、「街の風物詩を消すな」の声に押されて同42年に再開、現在は4~10月の期間限定で営業している。

ただ、大通公園でトウモロコシを食べるなら、採りたての当年物が屋台に出る7~8月がお薦めである。バラすと叱られそうだが、収穫期以外に並ぶトウモロコシは冷凍物だし、そもそもトウモロコシ、中でも丸齧りすると美味しいスイートコーンは、糖分が極めて短時間で澱粉化し、時間が経つと甘さが薄れてしまう性質があるからだ。

九州・東海・北陸は梅雨明けした。とはいえ、夏本番前、大雨に伴う河川決壊、土砂崩れで被災した地域の連日の報道には胸が痛む。一刻も早い復旧・復興を祈りたい。