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語彙力 No.946

2月、“森林限界”という言葉がSNSでトレンド入りした。森林限界とは高い木々が育たなくなる限界線のことで、富士山でいえば5合目付近である。

この言葉を発したのは、最年少19歳で五冠を達成し、3月9日名人戦の挑戦権を争うA級への昇級を果たした将棋の藤井聡太五冠。竜王戦の勝利から一夜明けた記者会見で、「富士山でいうと今何合目ですか」との質問に「頂上が見えないという点では森林限界の手前です」と答えたことから、この言葉が一気に注目を浴びた。夢の八冠まであと三つ残っており、まだ先ということだろうが、普通に5合目ですと言わないところが語彙の豊富な藤井五冠らしくてカッコいい。

IT化が進んだ現代では、文章を書くことは減ったものの、代わりに文章を入力することが増えた。電話よりスマホでテキストメールやラインで要件を伝えることが多くなり、文章力、語彙力が以前より重要になってきた。もちろんつたない言葉でも意思の疎通は取りあえずできる。しかし、豊富な語彙を使い適格な文章を記せば、自分の思いや考えを相手に正確に伝えられるし、知識ある社会人として信頼を得られるに違いない。

思い起こせば、藤井五冠はデビュー間もない中学生の頃から“望外(ぼうがい)”“僥倖(ぎょうこう)”“茫洋(ぼうよう)”など、大人でも知らないような難しい言葉を使って周囲を驚かせていた。彼の語彙力の高さは子供の頃からの読書量の多さだといわれている。語彙を増やすにはやはり読書が一番らしい。それも様々なジャンルの書籍を読むといいそうだ。

しかし、そう簡単にたくさんの本を読めるわけではなく、ならばゲームでと、言葉を当てるパズルゲームを始めた。きっかけは、最近SNSで話題になっている英単語のパズルゲーム “Wordle”。5文字の英単語を推測するもので、入力した単語のアルファベットが位置も文字も一致していたらマスが緑に、文字だけが合っていたらマスが黄色になる。これをヒントに6回のうちに英単語を当てるゲームだ。英単語を多くは知らない自分にとってはなかなか難しいが、シンプルでおもしろい。

Wordle人気の高まりで、日本語版Wordleもいくつか出ており、これなら語彙力がつくかと始めてみたが、ひらがなを使うため難易度が高く、毎回頭を悩ませている。考えてみれば、そもそも語彙が少なければ当てはめることができる単語も少ないわけで、まずは読書をして語彙を増やすのが先だった。

何事も一朝一夕にはいかないものだ。