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座りすぎ No.886

半年ほど前からスマートウォッチを使用し始めた。店頭に陳列されている商品はデザインや機能が実に多彩で、購入する際はずいぶん頭を悩まされた。腕に付けておくだけで脈拍や睡眠時間、運動量など、計測した情報をスマートフォンのアプリを通して数値やグラフでデータ化されるため、手軽に健康管理ができる。外観は腕時計そのものだから、時計プラスアルファ程度だろうと過度の期待はしていなかったが、「二度寝」さえも把握されていて、なかなか面白い。

日頃から、睡眠時間が短いことを自覚してはいたが、計測されたデータをみて、その短さに改めて気付かされた。せめて週末はしっかり睡眠をとらなければと反省したが、計測データから別の課題が見つかった。それは「座りすぎ」である。30分毎の歩数がグラフで表示されるのだが、1歩も歩いていない時間が毎日1~2時間もあったのだ。デスクワークとはいえ、何か対策を考えなければならない。

座りすぎについて、欧米では2000年頃から問題視されはじめ、オーストラリアでは官民一体で座りすぎ防止のキャンペーンを実施している。 長く座ったままでいると、脚の筋肉をほとんど動かさないため血流が悪くなり、代謝機能も落ちる。これが肥満や糖尿病だけでなく、がんなどを誘発し、死亡リスクが上がるという調査結果が出ている。

早稲田大学スポーツ科学学術院の岡浩一朗教授は、「がんの場合、座っている時間が長いほど罹患リスクが高くなる。顕著なのは大腸がんと乳がんで、座りすぎにより大腸がんは30%、乳がんは17%罹患リスクが上がる」と警鐘を鳴らす。

また「働きすぎ」といわれる日本人が、仕事などで平日に座っている時間は1日7時間と世界一長い。立っても座っても作業ができる一台で数万円する昇降デスクもあるが、導入している企業は日本では、ごく一部にとどまる。ならば、立って会議をする、トイレに行く、お茶をいれる、書類をシュレッダーにかけに行くなど、些細なことでも意識して動くことを心がけたい。座ったままでも、踵を上げ下げしたり、脚を浮かせた状態でつま先をまっすぐ伸ばしたり直角に立てたりするだけでも改善されるそうだ。

日頃、漠然と捉えていたこともデータとして可視化されると新しい発見がある。通勤電車で、ついつい空いた座席を探している行いを、変えていかねばと思う。