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「腰痛は気から」 No.820

「病は気から」はよく聞く言葉だが、「腰痛も気から」だったとは知らなかった。

諸兄は大丈夫だろうか? 腰痛に悩む人が多い。調査によると腰痛を訴える人は1000万~2800万人。日本の成人人口は 約1億人(28年4月現在)だから、約5~10人に1人が「腰痛持ち」というわけだ。

ただ、少し詳しく調べると、「腰痛」の不思議さが浮かんでくる。第1は、身体の悩みとして「腰痛」を挙げる人の年代を見ると、40代=35%、50代=37%が多く、イメージではもっと多そうな高齢層は、むしろ減ってくる点だ。

第2は、一説では腰痛全体の半数、他説では約85%が、レントゲンなどの画像検査では腰に明らかな異常が見つからないため原因を特定しにくい、「非特異性腰痛」と呼ばれる腰痛なのだそうだ。

「非特異性腰痛」には、さらに2タイプあるとされる。一つは、病気というほどではないが前屈みや猫背な姿勢、不適切な持ち上げ動作などが腰に負担を与えた場合に起きる「脊椎の不具合」と、もう一つが「脳機能の不具合による腰痛」 ―― 例えば仕事や人間関係に起因するトラブルや、腰痛に対する不安や恐怖など心理的ストレスが強まって起きる腰痛である。ストレスが強まると、ドーパミンなど痛みを抑える脳内物質の分泌が抑えられ、痛みが起こりやすいためで、つまり「腰痛は気から」というわけだ。

「慢性的な腰痛に悩む人は、『この痛みはいつまで続くのか』『仕事に集中できない』といった不安やストレスを抱え、抑うつ傾向に陥りやすくなる」と整形外科医・清水伸一氏。40~50歳の働き盛り世代に「腰痛持ち」が多い理由もそこにある。

しかし、腰痛の原因が実は多くの場合、心因性にあるのなら、その治し方も、気持ちの持ち方、構え方で改善できることになる。東京大学医学部付属病院の松平浩特任教授は「一度腰を痛めると、それが恐怖心として刷り込まれ、身体を過保護にかばってしまう。腰痛が慢性化する原因はそれ」と指摘。「痛みがあってもできるだけ動き、活動的に過ごすことが大事だ」として、自分をトラウマから解放し腰痛を治すための「3秒間体操」の実践などを、著書「腰痛は『動かして』治しなさい」で教えている。

厄介な「腰痛」からの卒業が「気持ちの持ち方」に因るのなら、たぶんほかにも、自身が「悲観脳」から脱け出しさえすれば展望が開ける事柄があるのだろうと思う。