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生活協同組合 No.937

今から100年前の1921年(大正10年)4月、日本初となる市民による生活共同組合「神戸購買組合」が現在の神戸市中央区八幡通で結成された。続いて5月には、現在の神戸市東灘区住吉で「灘購買組合」が結成された。いずれも1918年に発生した米価大暴落による米騒動がきっかけで、良質な生活用品を適正価格で購入できるようにすべく、社会運動家の賀川豊彦の指導のもとに計画されたものだ。

賀川は1888年に神戸の実業家の家に生まれたが、幼くして両親と死別し家業も破産、孤独な幼年期を過ごした。青年期にキリスト教に入信しキリスト教社会主義に傾倒。神戸のスラム街で奉仕活動を始め、「スラム街の聖者」として世界的にも知られる存在となった。この時の救済活動が日本の生活共同組合の原点である。賀川はプリンストン大学とプリンストン神学校に留学した経験をもとに、貧困問題を解決するため労働者の生活安定を目的とする生活協同組合運動に着手する。キリスト教の博愛精神で地域ぐるみでお互いに協同して生活を守り合う消費組合を創ろうと考えたのだ。協同組合運動の草分け的存在であったイギリスのロッチデール先駆者協同組合が手本となった。

賀川の思想には関西の実業家も多数賛同し、社会公共の奉仕事業として生活協同組合の結成に協力した。こうして結成された神戸購買組合と灘購買組合は、1962年4月に合併して「灘神戸生活協同組合」となり、日本一のマンモス生協となった。1991年の創立70周年には名称を「生活協同組合コープこうべ」に変更。1995年の阪神・淡路大震災では多くの店舗が被災し、近年は流通小売業態の多様化からディスカウントストア等との競合に晒されているが、現在も業界トップクラスを維持している。

今年2月に行われた日本生活協同組合連合会の「生協・コープの宅配の利用に関するアンケート調査」によると、新型コロナウイルス感染拡大を機に、新規利用者で20~30歳代の既婚者が増加、全体の6割以上となるなど、若年層に生協宅配利用が広がっていることがわかった。また新規利用者の約7割が宅配の利用を継続したいと回答しており、コロナ禍での生協宅配利用が定着しつつあるようだ。

100年前の結成当初は、組合員宅を回って注文を聞いて配達する「御用聞き制度」が評判だったというから、これは原点回帰かもしれない。コロナ禍に苦しむ現代にも、賀川が開いた生活共同組合の思想は連綿と受け継がれている。