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「OSO18」 No.949

「オソの仕業だ!」。北海道の東部・標茶町の牧場で、放牧中の牛1頭が死んでいるのが見つかった。地面に残された足跡や牛の背中にあった爪痕からみてヒグマだ。その牛はあばら骨が突き破られ、内臓や血液がすっかりなくなっている。異様な死骸の状態を見た牧場主は、地元で恐れられている、コードネーム「OSO18(オソじゅうはち)」の仕業だと確信した。

「OSO18」は、幅18㎝の足のサイズから体重300~350㎏、立ち上がると体長3mと推測される大型のヒグマである。最初の被害は2019年7月。これまでの3年間で合わせて60頭ほどが襲われたとみられる。初めて被害が発生した標茶町オソツベツという地名と、前足の幅が18㎝あることによりこのネームがついた。地元のハンターでも仕留められず、檻を設置しても、頭がいいのか罠には掛からない。

ヒグマは雑食だが、サケ・マスなど蛋白質を豊富に食べられる環境にいると大型化するらしい。元々臆病な性格で、むやみに家畜などを襲うことはないが、一度でも味を覚えると執拗に襲う傾向がある。時として人も被害に合う。

――1970年7月。北海道日高山脈のカムイエクウチカウシ山登頂を目指して出発した福岡大学ワンゲル部の学生5人のパーティーが、標高1979mの少し下でテントを張ったところヒグマが現れた。しばらく様子を見ていると、テントの外に置いていたザックを漁り、食物を食べ始めた。学生たちはすきを見てザックを取り返し、すべてテント内に入れた。しかしこれが間違いのもとだった。ラジオを鳴らし食器をたたいていると、ようやくヒグマは姿を消した。もう来ないだろう。しかし翌日朝、テントの外に大きな黒い影が…「福岡大ワンゲル部ヒグマ事件」は、3人の学生が犠牲になるという日本登山史上最悪の事態に。数日後、ヒグマはハンター10人の一斉射撃で射殺された。

人間の生活圏にはクマの食物となるものがたくさんある。ハチミツや蜂の子、秋になると柿や栗などの果実が豊富だ。効率良く食物を確保できることを学習した個体は、それが誘引物となって人間の生活圏に出没を繰り返すようになるという。

「OSO18」の被害への対応は、もはや町単独では難しく、昨年11月に町と北海道、熊の専門家などが集まり、「捕獲対応推進本部」を立ち上げ、さらに強力な対応を進めている。何度も家畜を味わったオソは、次の獲物を狙っている。