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アウフヘーベン No.824

それにしても小池百合子東京都知事は、なぜこうも外来語を多用するのだろう。キャッチフレーズの「都民ファースト(都民第一)」はまだしも、「ダイバシティ(多様性)」「スマートシティ(環境配慮型都市)」「リデュース(削減)」「ホイッスルブロワ―(内部通報者)」「アンシャンレジューム(旧体制)」「ワイズスペンディング(賢い支出)」「サスティナブル(持続可能な)」「アカウンタビリティ(説明責任)」「ウィズドロー(撤退)」 …… もう充分に食傷気味なのに、最近またドイツ語の「アウフヘーベン」が加わった。

「アウフヘーベン」は小池知事が「文芸春秋」7月号に寄せた寄稿の中に登場した。要約すれば「豊洲市場へ移転するか、築地市場を改修するか、議論は百花繚乱の様相を呈しているが、ここはアウフヘーベンすることだ」と。

かつて学生運動・安保闘争・ベトナム戦争が社会の関心事だった1965~1972年に大学生だった全共闘世代には、「アウフヘーベン」の言葉が耳懐かしく蘇る方もいらっしゃろう。ドイツの哲学者ヘーゲルが掲げた基本概念で、「2つの問題が起きた時、片方だけを犠牲にして問題を解決するのではなく、いったん立ち止まって、それを否定しながらも双方の折り合いをつけ、より高次元の解決方法を見出す」という意味合いになろうか。日本語ではやはり難解な「止揚」という言葉で訳される。

小池知事は20日、臨時記者会見を開き、「豊洲市場問題」について、「市場は豊洲に移転させるが、築地の跡地は売却せず、5年後をめどに再開発する。旧築地には市場機能も持たせ、将来は両者を併存させることを視野に検討する」と発表し、先の寄稿で“チラ見せ”した「アウフヘーベン」的解決案の正体を明らかにした。「現在の築地を復活させる『再整備』ではなく『再開発』という表現にしたのがポイント」(知事側近)だそうだが、都民・国民には「再整備」と「再開発」の違いがまた「?」だ。

ともあれ小池知事が、豊洲問題に対する考え方をやっと明らかにしたのは、東京都議選の23日告示を前に、「決められない知事」との批判をかわすためであることは誰もが分かっている。安倍首相が先の国会で「加計問題」等への追及を避けるため、会期延長を徹底的に避ける方法をとったのと根っこは同じと思われて仕方あるまい。

結局は自民党を離党した小池知事だが、日本の政治家の体質はやはり同じなのかと思うと、今週から本番と言われる梅雨空を仰ぐように、気が重くなる。