2024年6月全国の繊維倒産集計

件数、負債額とも低水準、件数は2022年10月以来の10件台

発生件=19件

負債額=39億5400万円

2024年(令和6年)6月の全国繊維業者の倒産(負債額1000万円以上=整理・内整理含む)は19件で、前月比12件(38.7%)減、前年同月比2件(9.5%)減少した。負債総額は39億5400万円で、前月比は51億7700万円(56.7%)減、前年同月比は16億7400万円(73.4%)増となった。6月は冬物決済を終え、支払いの端境期になるため例年倒産の少ない月にあたり、2022年は17件、2023年は21件と低い水準で、2022年9月、10月各19件以来の10件台だった。

負債額10億円以上の大型倒産は見附染工(株)(新潟県見附市、染色・整理加工、負債額16億円)1件、同5億円以上は(株)ヨシノコーポレーション(福岡市博多区、貸衣装ほか、負債額6億800万円)1件。

見附染工(株)は合繊複合織物を主体とする染色・整理工場で、国内トップクラスの技術力を持ち、大手繊維商社に営業基盤を形成してピーク時の1993/5期には年商32億186万円を計上していた。その後は減収・多額赤字の決算が続いて2003/5期にて財務は債務超過に転落。人員削減や賃金カットによる収益改善に努めたものの、2004年7月の水害で工場の機械が浸水し、同年10月には中越地震で工場が半壊するなど災害により甚大な損害を被った。このため2005/5期中にいがた産業創造機構の支援を受け劣後ローンにより資金を調達。翌2006/5期にはメインバンクからの出向者を受け入れ経営再編に着手したものの業績回復には至らなかった。近時はスポンサー企業を模索しながら再建を目指したが、候補先が見つからず、事業継続を断念した。

(株)ヨシノコーポレーションは「レンタル着物マイン」の店名で福岡市ほか九州エリアを中心に中国、関西、関東、中部地区で多店舗展開し、ピーク時の2019/2期には8億円近い年商規模まで成長していた。近年はコロナの影響で業界を取り巻く環境が変化して業容縮小を強いられる中、税金等を滞納するなど資金繰りがひっ迫して支え切れなくなった。

 繊維倒産は引き続き小規模小売業者主体で推移しているが、近時は染色・整理加工の倒産も続いている。同業界はこれまでに淘汰が繰り返され、事業者数そのものが減少。零細・小規模下請業者の廃業も増加傾向で、物づくりに支障を来している地域・業種もある。加工場は国内生産の根幹を担っているだけに、生地・アパレルメーカーなど業界全体に影響が波及するものと思われる。

業種別では「小売商」7件、「紳士・婦人・子供服・被服製造卸」4件、「その他」3件、「ニット製品・洋品雑貨製造卸」2件、「染色整理・特殊加工」「織物卸」「寝具・インテリア製品製造卸」各1件。 

原因別では「業績ジリ貧」18件で95%を占め、「業況急変」1件。