2024年3月全国の繊維倒産集計

件数、負債額とも大幅増、2023年3月以来の高水準

発生件=37件

負債額=115億900万円

2024年(令和6年)3月の全国繊維業者の倒産(負債額1000万円以上=整理・内整理含む)は37件で、前月比9件(32.1%)増、前年同月比では4件(9.8%)減となった。

負債総額は115億900万円で、前月比では72億6500万円(171.2%)増、前年同月比は8億5000万円(6.9%)減となった。

負債額10億円以上の倒産は(有)グランブルー(大阪市中央区、かばん・袋物ほか卸、負債額27億円)ほか2件、同5億円以上は(株)サプライヤードットコム(福岡市東区、紳士カジュアルウエア製造、負債額9億円)ほか2件。

前年同月は負債額10億円超の大型倒産がアッシュ・ぺー・フランス(株)(東京都港区、服飾雑貨ほか小売、負債額29億円)ほか1件、同5億円以上も7件発生し、(株)レナウンが破たんした2020年5月の202億8200万円以来の高水準となり、件数もコロナ禍前2019年7月の45件以来の40件超であった。このため、前年同月比は減少だが、それに次ぐ件数、負債額となった。

(有)グランブルーはヨーロッパインポートブランドのバッグや衣料品を中心に、化粧品原料やヘアケア用品などのコスメ関連商品を扱い、全国の小売業者や卸商に販路を形成。2022/9期には年商28億6326万円、2023/9期も26億2852万円を計上していた。しかし、実際の売上は2期ともそれぞれ半分以下、収益も赤字決算と大きく乖離する粉飾決算で、3月以降の資金繰りの見通しが立たず、事業継続を断念した。

冬物決済、年度末資金など資金需要が増加する当月は例年、倒産件数、負債額とも年間で一番増える時期で、倒産の少なかったコロナ禍の規制中も同様だった。

ただ、当月の負債額10億円以上には、数年前から実質休眠状態にあった企業、すでに他社に事業譲渡して解散していた企業もあり、(株)サプライヤードットコムは昨年11月代表者が死去して後継者難に陥っていた。これらの処理が当月に重なったことで、負債総額を押し上げた。

2月集計で「倒産件数が急激に増える気配は少ない」と述べたように、この傾向は変わらないと思われる。しかし、マイナス金利政策が解除されることが決まり今後の金利への影響が懸念され、さらに為替が再び円安に振れるなど、輸入仕入と銀行借入への依存が高い繊維業界の取り巻く環境は厳しさを増している。

業種別では「小売商」12件、「紳士・婦人・子供服・被服製造卸」11件、「ニット製品・洋品雑貨製造卸」6件、「その他」4件、「寝具・インテリア」2件、「染色整理・特殊加工」「織物製造」各1件。  原因別では「業績ジリ貧」32件で86%を占め、「業況急変」4件、「放漫経営」1件。