2024年10月全国の繊維倒産集計
件数は前年同月比微増だが、大型倒産発生せず負債額は減少
発生件=34件
負債額=42億2600万円
2024年(令和6年)10月の全国繊維業者の倒産(負債額1000万円以上=整理・内整理含む)は34件で、前月比10件(41.7%)増、前年同月比1件(3.0%)増加した。
負債総額は42億2600万円で、前月比は23億6800万円(35.9%)減、前年同月比は43億6400万円(50.8%)減となった。
負債額10億円以上の大型倒産は発生せず、同5億円以上は(株)カザ(東京都渋谷区、登記面:大阪市中央区、装飾品・装身具ほか製造、負債額5億7000万円)1件、その他は大半が少額倒産で、同2億円未満の小規模倒産が29件(85.3%)占めた。
前年10月は、2023年では負債額が2番目に多かった月で、(株)レイ・カズン(負債額31億円)と(株)ニットプランナー(負債額16億9000万円)の2社が負債総額を底上げしていた。
(株)カザは女性をターゲットとするアクセサリー、かばんなどを扱い、自社ブランド「Kaza」「abbie」を展開して専門店などに販路を築くほか、メーカーのOEMを手がけ2019/2期には年商9億円を計上していた。近年はコロナの影響で多額の赤字決算が続く中、雇用調整助成金7578万円の不正受給が発覚し、一部を返還したものの全額返還の目途が立たず破たんに至った。
雇用調整助成金ほか各種助成金の不正受給に関しては、業種を問わず時間の経過とともに一定数発覚している。その大半は発覚後に全額返還されるが、繊維業界では売上規模に反し、不正受給の金額が多い企業などが倒産に追い込まれるケースもある。一方、コロナ融資に関しても中小・零細企業を中心に返済が滞留している先や実質返済不能の状況に陥っている先が潜在化しており、これらが今後、倒産予備軍となる可能性がある。
繊維業界は地球温暖化による暖冬のあおりから、冬物衣料の販売不振が数年間続いた後でコロナ禍となった。本来ならばコロナ前と同様に月毎に一定水準の倒産が発生するところだが、各種助成金とコロナ融資により「先送り」され、現在もそれは継続している。今年も大型倒産が複数発生した3月と5月を除くと倒産件数、負債額とも低い水準で推移しており、今後もしばらくは「少額・清算型」の倒産が大勢を占める展開になると思われる。ただ、多くの中小・零細企業は原価高を販売単価に転嫁しきれておらず、また、銀行借入への依存が高い先にとって金利上昇に振れたことは懸念材料であるなど、小規模倒産の件数が増える要因はある。
業種別では「小売商」11件、「ニット製品・洋品雑貨製造卸」「その他」各6件、「紳士・婦人・子供服・被服製造卸」4件、「織物製造」3件、「寝具・インテリア製品製造卸」2件、「染色整理・特殊加工」「呉服・和装製品」各1件。
原因別では「業績ジリ貧」32件で94%を占め、「業況急変」2件。