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脳 No.818

ダチョウは世界最大の鳥類である。頭までの高さ2.5m、体重は150㎏。あのギョロッとした目玉だけでも重さ60gほどある。にもかかわらず、脳の大きさは40g。実際ダチョウは記憶力がかなり悪いそうだ(今泉忠明著「ざんねんな いきもの事典」)

ただし、体重比の脳の重さがそのまま知性の高さを表すかといえば、ヒトよりずっと値が高い生物もあるため決め付けられないらしいが、「脳化指数」と呼ばれる脳の重さと体重との関係を見ると、ヒト=7.5をトップにバンドウイルカ=5.0、シャチ=3.0、チンパンジー=2.4、象=2、クジラ=1.8、ゴリラ=1.7、犬=1.2、猫=1.0などと続く中、ダチョウは0.1未満の低位にとどまる。

「三つ子の魂、百まで」の諺は間違いないようだ。なぜなら人間の赤ちゃんの脳は受精後2カ月でほとんど人の脳の形になり、胎児としての中盤期の20週後から表面にシワが出来始める。そして誕生後1歳には大人の脳の重さの70%、3歳には90%に成長するそうだ。乳幼児どころか胎児教育の大切ささえ説かれる理由はそこにあろう。

東京大学が2014年に行なった学内調査で、興味深い結果が報告された。東大生の65%が「幼少時にスイミング教室に通っていた」と答え、学習系を含む習い事のトップだったというのだ。スイミング教室と東大生 ―― 無関係のように思える取り合わせが、識者によれば無縁ではないらしい。水泳を覚える過程で体験する「息を止める」という行為が、実は脳の発達を促す効果があるとの研究報告があるからだ。

提唱したのは米教育学者ウィン・ウェンガー教授。水泳の練習では必然的に「息を止める」という行為が伴うが、人間は、息を止めると脳が酸素不足に陥っているという錯覚に陥り、その結果、頸動脈が膨張して、酸素を多く含んだ血液を通常以上にたくさん脳に送り込もうとする。そうした酸素不足状態を何度も体験させ慣れさせると、脳に常に大量の血液と酸素を送り込む習慣ができ、脳の活性化に役立つ、というのだ。

泳がなくても、ビニール袋や紙袋を口にピッタリ当てて息を吐き、吐き切ったら吸い込む ―― といったトレーニングを重ねることによっても同様で、「マスキング法」と呼ばれ、最近注目されているそうだ。ただし。心臓疾患などがあると、脳の活性化どころか危険なので専門家に相談することをお勧めするし、また、ビニール袋を口にスーハーしている様子を勘違いされ警察に通報されても、責任は負いかねるので念のため。

結婚 No.819

庭先や公園でちょうどいま、甘い香りを薄ら漂わせながら咲いている黄色の可愛い花がある。「木香茨(モッコウバラ)」だ。その図柄を、「お印」と呼ぶ日本の皇族方が身の回り品に付けるシンボルマークに使っていらっしゃるのが秋篠宮家の長女・眞子さまだ。バラ科なのにトゲがなく、花言葉は「初恋」「純潔」「素朴な愛」。なんと相応しい花か。

「眞子さま、ご婚約へ」の朗報が、暗い話題が多く沈みがちな日本人の心を、一気に明るくした。「えっ、ホントに?」「おめでとうございます!」と街頭インタビューで答える人々の笑顔をテレビで見ながら、おやおや自分も微笑んでいることに気付く。

お相手の小室圭さんは、国際基督教大学時代の同級生で、法律事務所に勤めながら一橋大学大学院で経営法務を学ぶ。「5年ほど前、飲食店で開かれた留学に関する意見交換会で知り合って以来、交際が続いてきた」と聞き、「つまり、合コン?」と思ったのは世が世なら不敬罪モノの邪推らしいが、もしそうだとしてもいいではないか、庶民的で。

皇族として公務を果たしながら、同時に一人の女性として愛を育んできた眞子さま。そんな彼女を皇族から連れ出し、これからの長い人生を共にすることを決意した、親しみを込めて呼ばせてもらえば小室君。25歳の2人の勇気は、青年らしく爽やかだ。

日本人の晩婚化、未婚化が、見過ごせない社会問題になっている。2015年の厚労省調査によれば、日本の生涯未婚率(=50歳までに一度も結婚したことがない人の割合)は男性23.37%、女性14.06%。5年前に比べ共に約3ポイントのアップで過去最高だ。

ただし、結婚意欲が低下しているかと言えば、必ずしもそうではない。同じく厚労省調査では「いずれ結婚するつもり」との答えが男性85.7%、女性89.3%。20年間では若干減っているとはいえ、まあまあ高い水準を維持している。

ではなぜ若者たちは結婚しないのか? 調査では「結婚資金」をネックに上げる人が男性43.3%、女性41.9%と共に最も多かった。さらに終身雇用の崩壊=非正規雇用の拡大が、幸せな結婚生活を支えるべき家庭経済の基盤を不安定にし、結婚そのものへの不安感を生み、晩婚化や、未婚化と言うより「非婚化」、やがては少子化に繋がる。

そうした風潮は、間違いなく将来「国力の低下」を招こう。それを防ぐために、いま何に取り組まなければならないかの議論が、安倍政権では、改憲論議などに比べてあまりにも少ないことを、人生の残り時間が減る怖さに敏感な年配世代ほど、心配するのだ。

「腰痛は気から」 No.820

「病は気から」はよく聞く言葉だが、「腰痛も気から」だったとは知らなかった。

諸兄は大丈夫だろうか? 腰痛に悩む人が多い。調査によると腰痛を訴える人は1000万~2800万人。日本の成人人口は 約1億人(28年4月現在)だから、約5~10人に1人が「腰痛持ち」というわけだ。

ただ、少し詳しく調べると、「腰痛」の不思議さが浮かんでくる。第1は、身体の悩みとして「腰痛」を挙げる人の年代を見ると、40代=35%、50代=37%が多く、イメージではもっと多そうな高齢層は、むしろ減ってくる点だ。

第2は、一説では腰痛全体の半数、他説では約85%が、レントゲンなどの画像検査では腰に明らかな異常が見つからないため原因を特定しにくい、「非特異性腰痛」と呼ばれる腰痛なのだそうだ。

「非特異性腰痛」には、さらに2タイプあるとされる。一つは、病気というほどではないが前屈みや猫背な姿勢、不適切な持ち上げ動作などが腰に負担を与えた場合に起きる「脊椎の不具合」と、もう一つが「脳機能の不具合による腰痛」 ―― 例えば仕事や人間関係に起因するトラブルや、腰痛に対する不安や恐怖など心理的ストレスが強まって起きる腰痛である。ストレスが強まると、ドーパミンなど痛みを抑える脳内物質の分泌が抑えられ、痛みが起こりやすいためで、つまり「腰痛は気から」というわけだ。

「慢性的な腰痛に悩む人は、『この痛みはいつまで続くのか』『仕事に集中できない』といった不安やストレスを抱え、抑うつ傾向に陥りやすくなる」と整形外科医・清水伸一氏。40~50歳の働き盛り世代に「腰痛持ち」が多い理由もそこにある。

しかし、腰痛の原因が実は多くの場合、心因性にあるのなら、その治し方も、気持ちの持ち方、構え方で改善できることになる。東京大学医学部付属病院の松平浩特任教授は「一度腰を痛めると、それが恐怖心として刷り込まれ、身体を過保護にかばってしまう。腰痛が慢性化する原因はそれ」と指摘。「痛みがあってもできるだけ動き、活動的に過ごすことが大事だ」として、自分をトラウマから解放し腰痛を治すための「3秒間体操」の実践などを、著書「腰痛は『動かして』治しなさい」で教えている。

厄介な「腰痛」からの卒業が「気持ちの持ち方」に因るのなら、たぶんほかにも、自身が「悲観脳」から脱け出しさえすれば展望が開ける事柄があるのだろうと思う。