2024年のレーダー

未来の話ではない2030年問題

2030年問題、2040年問題、2050年問題…10年のスパンでそれぞれの時代に起きる問題が懸念されている。

それに先立ち来年に迫った「2025年問題」は、団塊の世代が全て75歳以上となり、後期高齢者が全人口の17.8%、約2180万人に達することで人口問題が顕在化するというものだ。そして、その5年後さらに少子高齢化が進み、日本の人口の約3割が高齢者になるというのが「2030年問題」である。

企業にも重大な影響を与える可能性があると指摘されており、その主な問題は、深刻な人材不足、人材確保競争、人件費の高騰、そしてそれらに伴う企業業績の悪化の4つである。労働需給調査によると、2030年の労働需要が7073万人に対して供給される労働人口は6429万人で644万人不足する見通しであり、人材獲得競争が激化して人件費が高騰する。さらに人手不足から営業や販売の人員が足りなくなり、顧客が他社に流れるなどで業績格差が顕著となり、人材不足による倒産も増加すると予想されている。人材不足はほとんどの業界で生じるとみられるが、中でも建設、観光、航空、IT、医療・介護の5業界で特に厳しい予測になっている。

そして「2040年問題」は、それがピークに達し、少子高齢化による生産年齢の減少が一層進むことにより、問題が深刻化することを指し示すものである。しかし2030年にせよ2040年にせよ突然やってくるわけではない。ただ来るのを待つだけでなく、今から有効な対策を講じておくことが少しでも問題の解消や緩和につながるのではないか。

では、どのような手立てがあるのか。ある経営コンサルタントは次の対策を挙げている。まずテレワークやフレックスタイム制の導入、副業容認などの働き方改革を進めることで女性や高齢者が働きやすい環境を整備する。そして新しいスキルの取得など若年層、未経験者などの人材育成に注力し、デジタル化を推進して、業務の効率化、時間の短縮や正確性を向上させることである。そして福利厚生の充実で若手社員が働きやすい環境を整え、離職防止や労働意欲の向上を図ることを指摘する。

一方、個人については、健康維持、生活環境の見直し、資産形成など将来の生活に備えた準備が求められよう。2030年問題は、企業にとっても個人にとっても決して遠い未来の話ではない。

 

今年は1904年の日露戦争開戦からちょうど120年である。CS放送で1981年の映画『二百三高地』が放送されていたが、今回は、この映画で乃木将軍が着用した軍服“肋骨服(ろっこつふく)”に注目したい。1月公開の映画『ゴールデンカムイ』の鶴見中尉も着ていた胴体前面に飾り紐を横向きに複数本付けた軍服のことで、この飾り紐があばら骨のように見えることから日本では肋骨服と呼ばれている。

肋骨服の起源は16世紀、オスマン・トルコ軍の軍服を真似たハンガリーの軽騎兵(ユサール)が発祥とされる。ユサールはタイトで裾が短く、刺繡や飾り紐を施した上衣(ドルマン)を着用しており、これが17世紀後半にヨーロッパに広まった。ユサールの任務は偵察、奇襲、後方攪乱(かくらん)であるため、機動力を発揮すべく軽装備に徹していた。馬上では重たい甲冑や防盾を装備できないため、敵兵のサーベルや槍の切っ先から致命傷を避ける最低限の防御として飾り紐が装着された。なかには防御性を高めるべく胸部に何十本も隙間なく装着したものもあった。しかし、時代の変遷とともに装飾性が強くなり、フランスのナポレオンが兵員徴募のために取り入れた豪華で勇壮な装飾が好評で、ユサールのみならず、すべての兵科で採り入れられるようになった。

衣服標本家の長谷川彰良氏によると、当時の軍服は反身(そりみ)を強調する構造になっていて、胸板を厚く、姿勢を強制的によく見せる造形美を追求していたという。前身頃がAラインのようにハの字型に開いており、ボタンを閉めていくと胸のボリュームが強調され、胸を張った力強さを表現できたそうだ。

日本では、明治時代に陸軍が制定した明治6年制式軍衣袴で、将校と下士卒の区別を明確化すべく、将校の軍服に濃紺絨の肋骨服を正式採用した。日露戦争では「明治33年制式軍衣袴」が着用されたが、より実戦向きデザインに更新した「明治37年戦時服」で肋骨服は廃止された。ただし、アメリカ陸軍(ウエ)士官(スト)学校(ポイント)や各国の儀仗隊(ぎじょうたい)などでは儀典用制服として、現在も着用されている。

また、1970年代にビートルズのアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のジャケット写真の肋骨服を模したポップ調コスチュームを契機に、日本でもグループサウンズでミリタリールックが流行するなど、現代ファッションにも影響を与えたのである。

「北陸新幹線で恐竜王国福井へ行こう!」――先月、延伸した北陸新幹線の福井行きを誘う旅行会社の広告コピーである。福井駅前では実物大の動く恐竜が出迎える。恐竜の化石が見られる博物館、恐竜をモチーフとした部屋のある恐竜ホテル、恐竜に関する雑貨や土産品の販売など、まさに福井は恐竜王国である。

1982年、福井県勝山市で中生代白亜紀前期のワニ化石が見つかったことをきっかけに大規模な発掘が行われ、多くの恐竜の化石が発見された。日本で発見された恐竜の化石のうち約8割は福井県で見つかっているといわれる。

恐竜は今から2億2800万年前から6500万年までのおよそ1億6000万年もの長い間、進化によって姿を変えながら環境変化に適応し地球に棲息していた。しかし、世界各地で発掘された標本を集めても、当時、生きていた種類の4分の1にしか過ぎないといわれ、全体像は依然として謎のままである。絶滅した原因についても、巨大隕石の衝突とか火山活動などいろいろな説があり、興味は尽きない。

ある経営者は「1億数千万年もの間、あらゆる生物の上に君臨してきた恐竜たちが最後に滅びていった。このような現象は企業のあり方ともつながる」と言う。環境に適応した恐竜たちは、その環境が続いているうちは強かったが、大きな変化に勝てなかったのだ。隕石の衝突などの突然のアクシデントはもとより、恐竜たちは自らの大きな身体をもてあまし、食べ物が無くなり滅んでいったという説もある。

企業も大きくなり過ぎたり、市場の縮小によって互いにパイを奪い合い、滅んでいくことがある。ところが恐竜は鳥に姿を変えて今も生きているという説が有力。福井県立恐竜博物館の資料にも「鳥類は羽毛の生えた獣脚類(羽毛恐竜)の仲間から進化した」と書かれている。近年の研究では祖先の獣脚類から鳥へと羽毛や骨格が飛ぶことに特化して進化したことが分かってきた。環境適応の道として、恐竜は鳥というそれまでとは違う特性を生かした姿に進化したということである。

見た目の大きさや強さだけでなく、生存するために本質を見失わず、それぞれの特性を生かすことで、生き残る術を手に入れることが出来るのである。

環境の変化にうまく適応していく()は、企業のあり方、生き方に通じるものがあるのではないか。

 

行列の長さだけを見て並んではいけない…ネットニュースに「レジの行列が早く進む列を見分けるコツ」というのがあった。

混んでいる時間帯のスーパーのレジで、どの列に並ぶか?―「待っている人数が少ない列」「待っている人のカゴの中身が少ない列」「レジ係の手際の良い列」などがある。多くの人は「人数が少ない列」を選ぶが、この選び方は正解ではなく、それよりも「いかに列がスムーズに流れているか」を見る方が良いという。確かに並ぶ人が少なくてもレジ係の処理が遅いと、待つ時間は長くなる。列が長くてもスムーズに流れていれば、待つ時間は少ないのである。

ところが世の中、予測どおり行かないことが起こる。並んでいる隣の列がスムーズに流れていると思い、移った途端、前の人が店員にポイントカードを求められて探したり、支払いに小銭をゆっくり数えたり。そうすると、流れが一気に止まってしまい、元の列の方が早かったということも少なくない。

こんな経験はほかにもある。なくしたものが一つ見つかると、ほかの何かが一つなくなる。急いでいる時に限って赤信号にひっかかる。傘を持って出かけると雨が降らない。調子の悪い機械を人に見せようとすると通常通り動く。…日常生活には説明のつかない皮肉な現象が時として起きる。昔からいわれる「マーフィーの法則」である。

1949年、アメリカ空軍のテスト飛行で、間違った設定をしたため、メーターが故障した。その時、エンジニアが「いくつかの方法があって、一つが悲惨な結果に終わる時、人はそれを選ぶ」と言った。このエンジニアがエドワード・A・マーフィー・ジュニアである。マーフィーの法則は、生活の中での法則として広がり、日本では30年ほど前に書籍のヒットなどで大きな話題を呼び、その後も語り継がれている。

マーフィーの法則で起こるマイナスの出来事は、対処方法の選択に役立つといわれる。マイナスの出来事を事前に把握していれば、それに応じた対処方法を考えておくことが出来るからだ。把握していないと想像以上に時間を費やすことになり、それが仕事の遅れやミスにつながる。

「忙しい時ほど、問題が発生する」「失敗する可能性のあるものは、いずれ失敗する」。マーフィーの法則は、いつの時代も人間の真理をついている。

 

サイダー瑪瑙 No.967

もうひと昔も前のことだが、学生時代に北海道周遊の旅に出かけた。旅の終盤、礼文島で泊まったユースホステルで「すぐ前の海岸で瑪瑙(めのう)が見つかるかもしれないよ」と教えてもらった。瑪瑙がどんなものかよく知らないまま浜辺に降りて、とりあえずそれらしい石を探していたら、近くにいた友だちが「きれいな石見つけた!」と声を上げた。掌にのっていたのは青緑色の小さな半透明の石。ちょっと色が違うようだけれど、もしかしたら珍しい瑪瑙かもしれないねと話しながら宿に戻り、受付の人に石を見せて尋ねると「これはサイダー瑪瑙ですね」と笑って答えてくれた。不思議そうな顔をする私たちにサイダービンの欠片が波でもまれて角が取れてまるくなったものと教えてくれた。それがシーグラスと呼ばれていることを知ったのは、ずいぶん後のことだ。

私たちは次の日も海岸に出て、宿で見せてくれた本物の瑪瑙を頼りに探したが、結局見つからず代わりにサイダー瑪瑙をいくつか拾った。その時拾ったサイダー瑪瑙は大切に持ち帰ったが、いつの間にかどこかへいってしまった。

この出来事を思い出したのは、いま鉱物がちょっとしたブームだという記事を読んだからだ。鉱物採集のツアーもいくつか企画されており、岐阜県下呂市の笹洞鉱山の蛍石採集ツアーなど、人気のものはすぐ満席になってしまうという。写真を見るとブラックライトを当てて幻想的に輝く蛍石はたいそう美しく、一度でいいから実際に見てみたくなる。新潟県糸魚川市にあるヒスイ海岸でのヒスイ探しにも心惹かれる。とはいうものの、どちらも簡単には行けそうにない場所だ。まずは有名な鉱物採集の場所でなくてよいので、近場でお気に入りの石を見つけて拾ってみるのも楽しいかもしれない。今から思えば、サイダービンの欠片を瑪瑙ではないかと尋ねた私たちに、丁寧に説明してくれた宿の人には感謝しかない。彼のお陰でサイダービンの欠片が私たちにとっての瑪瑙となったのだから。

ところで、ネットで調べてみると、思いのほか多くの石拾いスポットが見つかった。石拾いに関する本もあり、どうやら“石拾い”は立派な趣味になっているようだ。石拾いマニアはそれぞれ近場でも石拾いを楽しんでいるようで、これなら無理して鉱物の産地に行かなくとも近くの河原や海岸で楽しむことができる。本物の瑪瑙やヒスイが見つからなくとも、自分だけの宝物になる石はきっとあるはずだ。

「辰巳天井」 No.966

2024年は「(きのえ)(たつ)」の年。甲は十干の最初に出てくるもので、固い亀の甲羅に由来する。種子が厚い皮に守られて芽を出さない状態を表しており、「陰陽五行思想」では「木の兄」と表記し、五行の「木」は生長、春の象徴であり、生命や物事の始まり、成長を意味する。また、「辰」は十二支の5番目で「振るう」という文字に由来しており、自然万物が振動し、草木が成長して活力が旺盛になる状態を表す。辰は竜(龍)のことでもあり、十二支で唯一の空想の存在だが、東洋では権力・隆盛の象徴とされている。このことから甲辰の年は、成長した芽が固い甲羅を割って龍の様に天に昇らんとする年回りであり、これまでの努力が成果につながる年といえよう。

昨年卯年は相場格言「卯は跳ねる」のとおり、日経平均株価は跳ね上がった。今年は「辰巳(たつみ)天井(てんじょう)」。日経平均株価は4営業日続伸し11日の終値は3万5049円、バブル経済期以来約34年ぶりの高値を付けた。

景気回復に期待して「辰」にまつわる「縁起のいい格言」を並べてみた。

◆画竜点睛)

一番大切な一点を加えることで物事が完成させること。

◆足元から竜が上がる

身近で突然意外なことが起こること。急に思いついて物事をはじめること。

◆登竜門

鯉が滝をのぼって竜になったという中国の故事から、立身出世の関門のこと。

◆竜は一寸にして昇天の気あり

優れた者は、幼い時から非凡なこと。

◆竜の雲を得る如し

竜が雲を得て天に昇るように、英雄豪傑が機を得て盛んに活躍するさま。

◆竜驤虎視(こし)

威勢のあるものが権勢をふるって世界を睥睨するさま。

◆臥竜鳳雛(すう)

優れた人物が好機を掴めず、世間に隠れていること。三国志の諸葛公明と龐統士元(とうしげん)の故事から。