今週のコラム

日刊紙「信用情報」に掲載されているコラム(レーダー)を、毎週お届けします。

 初の「経済センサス」  No.556
 諸兄の会社・事業所にも用紙が届いているはずだが、「経済の国勢調査」ともいえる初めての「経済センサス-活動調査」(正式呼称は「経済構造統計」)が、2月1日現在を調査時点として行われる(調査票の提出期限は原則2月29日)。

 今回の調査は、全国すべての会社・事業所の活動状況を把握するためのもの。調査項目は経営組織や開設時期、従業員数、事業内容、23年中の売上(収入)高、商品手持ち額、販売形態、売場面積、費用総額とその内訳、設備投資の有無と取得額、営業時間、店舗形態など多岐にわたる。とくにこれまで不充分だったサービス産業についても実態を正しく把握することによって、GDPなど経済統計の精度向上を図るという。

 「センサス」(Census)の語源は、総務省統計局のHPによると古代ローマ時代に人口の調査や財産の評価、税金の査定などを担当する役人の「Censor」(ケンソル)。これをラテン語で「Censere」と言い、転じて現在の「Census」になったとされる。

 一般の統計調査は、調査対象(サンプル)を一定数に絞って実施されることから「標本調査」や「抽出調査」と呼ばれるが、今回の「経済センサス」は国勢調査と同様、該当者のすべてを調査対象にする大規模な「全数調査」。法的な位置づけも、各省庁合わせて現在56ある統計法に基づく重要な「基幹統計調査」の1つに定められており、調査対象者は調査票に記入・提出する「報告義務」を負う。報告を拒んだり虚偽の報告をすると50万円以下の罰金に処される(統計法第13条、61条)ので、念のため。

 「センサス」はかつて、国民などに納税や徴兵、強制労働を課すための基礎データを収集する目的で実施されることが多かった。しかし近年は、社会構造の変化などを知る目的で行われる。今回の調査でも、調査票の記入内容を、たとえば徴税など本来の調査目的以外に使用することは統計法で厳しく禁じられている。

 「すべての産業にわたる経済活動の多角化に対応した統計情報を整備し」「地域の実情に応じてきめ細かな施策を展開するための基礎資料にする」と実施主体の総務省は調査の意義を謳う。集計結果の速報が来年1月末に公表される予定だ。ただし、経済構造の全容が明らかになっても、それが政策の立案に資されなければ何の意味もない。

 国・政府は、戻って来た調査票の1枚1枚に込められた、厳しい経営環境下で苦しむ企業の切なる思いと期待を汲み取って、ぜひ政策に活かしてほしいと願うばかりだ。

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