今年初詣でに出掛けた誰もが「去年より参拝客が多かった」と答える。大震災後の新年という要因が、やはり日本人の背中を無意識に押しているのだろうか。納められた絵馬にも「家族みんなが健康で暮らせますように」などとの願いが多く見受けられた。 「健康」という言葉は中国の古典「易経」にある「健体康心」が語源。つまり、身体が健やかであるだけでなく、同時に心も安らかな状態を意味する。WHO(世界保健機構)も「健康の定義」を「病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」(日本WHO協会訳)と掲げている。「社会的」部分は個人レベルでは難しいとしても、心身両面での「健康」管理は、一人一人の注意と努力に負わなければなるまい。 年の初めにあたって、中国・宋時代の哲人・朱新沖が説いた人生設計における「五計」を、自身に照らして考えてみることも、心身の「健康」の維持に役立ちそうだ。その「五計」とは、一、生計=いかに生くべきかという本質的な生き方 二、身計=いかなる職業、価値観をもって生きるか 三、家計=夫婦関係、親子関係をどう築き、維持していくか 四、老計=いかに年を取り、老いたる者の価値をどう生かしてゆくか 五、死計=いかに死を迎えるかという死生観、である。 弊紙読者のおそらくほとんどは「生計」「身計」「家計」の段階をすでに終え、人生の佳境としての「老計」を考える時期を迎えていらっしゃろう。「老計」という言葉の響きにやや抵抗感を持つかも知れないが、歴代総理の指南役といわれた陽明学者・安岡正篤氏は著書「困難な時代を生き抜く『しるべ』――人生の五計」でこう書いている。「老いてゆくということは、みんな老衰することだと思うが、そうではない。老という字は『なれる』とか『ねれる』と読む通り、老熟するということ。老ゆる計りごとが大切なのであって、老年はそれだけ値打ちのあるものでなければならない」 安岡氏はまた、そろそろ「老計」を立てる時期を迎えた世代に対し、やはり中国「荘子」(雑編)に残る蘧伯玉の言葉を送っている。いわく「年五十にして四十九年の非を知れり。六十にして六十化す」(50歳になってやっと、それまでの49年間の誤りに気が付いた。60歳になればまた60歳なりの変化があるものなのだ)。 今年は何に挑戦するか ―― 「一年の計」を立てる時間は、今ならまだ間に合うと思う。 |
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