リビアのカダフィ大佐、シリアのアサド大統領、少し前ではエジプトのムバラク前大統領 ―― 民意に耳を貸さないばかりか抑圧してでも地位にしがみつこうとする権力者たち。本来真っ先に守るべき国民を蔑ろにする行動はリーダーの資質以前の問題だが、残念ながらそれが、人間が人間たる所以の弱さであり悲しい性なのだろうか。 今回の震災で、数日ぶりの炊き出し食事なのに列を乱すことなく整然と待つ被災者の姿が、世界中から感嘆され、賞賛を浴びた。にもかかわらず、私たち国民を、国全体を、より良い方向に導いて行くべき日本の政治の、現在のありさまは何と情けない状態かと腹立たしくてならぬ。一時浮上した民主党・自民党の大連立構想が、何が不都合だったのか国民にはよく分からないまま立ち消えになったと思ったら、今度は政権与党内からも「菅下ろし」の声だそうだ。菅さんが日本の首相として最適任かどうかには異論があっても、とにかくいまは、国民の思いと乖離した権力争いは御免蒙りたい。 人類滅亡の危機を描いた米国映画「アルマゲドン」(1998年製作)や「2012」(2002年製作)には、強力なリーダーシップを発揮する大統領が登場し、大混乱に陥った国民の心を静める役割を果たす。スケールや場面は全然違うにせよ、先の統一地方選で、東京では石原慎太郎氏が都知事に4選され、大阪では橋下徹府知事が率いる「維新の会」が大きく躍進したのは、国が危機的状況にある中で、国民がいま政治に第一に求めているのは「強いリーダーシップ」であることを映しているのではなかろうか。 徳川慶喜 ―― 日本史の教科書では江戸幕府を放り投げたような姿で記述されることが多い。しかし、歴史作家・司馬遼太郎は彼を高く評価し、「優れた行動力と明晰な頭脳を持ち、徳川十五代の中では家康以来の名将軍」と自著「最後の将軍―徳川慶喜」で書いている。徳川幕府という260年余にも及ぶ巨大権力を「無血」で明け渡した例は近代以前の日本の歴史にないばかりか、世界的に見ても限りなく少ない。 統率力だけがリーダーシップではない。退路を断ち、全責任を自分が背負う「覚悟」が、この人の性根にはしっかり据わっていそうだと思えるリーダーに、人はついて行く。民主党も自民党も他政党も、また原発事故に対応している東京電力も原子力安全保安院も、どこかに自己の立場を庇い繕う姿勢が見える気がしてならない。そんな不信感が、さまざまな「風評被害」を生む、人々の不安の背景になっているのではあるまいか。 |
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