チュニジア、エジプト、バーレーン、リビア……中東で「民主化の嵐」が吹き荒れている。その世界的な動きに巻き込まれることを恐れる中国は、インターネットへのアクセスを制限したり、言論や報道を規制するなど国体の維持に懸命だが、国家経済が急成長した他方で国民の間に生じた貧富の格差が「不満のエネルギー」を溜めているのは事実だから、時期はともかく、いずれ大きな変化を避けらない気がする。 そうした国々に比べれば、何でも自由に口にできる私たち民主国家・日本の国民は幸せ――かというと、必ずしもそうではあるまい。とりわけ3月というのは、人事考課の結果や処遇に対する社員の不満が、社内のそこここに漂い易い季節である。 携わってみれば、人が人を評価することの難しさを痛感する。とくに陥りやすい不適切な評価が、米国の心理学者エドワード・L・ソーンダイク教授が指摘する「ハロー効果」と呼ばれる落とし穴だ。「ハロー(=halo)」とは「後光が差す」と言う時の「後光」のこと。たとえば被考課者が「東大卒」と聞いただけで「学力優秀」で「品行方正」だが「プライドが高い」「協調性を欠く」など、考課者が勝手に描いた「後光」=固定観念に引きずられる傾向が強いことが研究の結果、報告されている。 「人の長所に多く目が行く人は幸せだ」「人を使うには、叱って使う、批判して使うこともあるが、褒めて使う人が概して成功している」と松下幸之助氏。人を評価するときは、短所より、まず長所に目を向けることの大事さを「経営の神様」は説いた。 その言葉が正ししいことは、米国の教育学者ロバート・ローゼンタール教授の実験による「ピグマリオン効果」で立証されている。ある学級の生徒に知能テストを受けさせた際、担任教師に、本当は無作為に選んだに過ぎない数人の生徒名を見せ、「彼らは数カ月以内に成績が伸びるはずだ」と伝えた。すると、それら数人の生徒の成績が実際に上がったのだ。それは、担任教師が、期待の眼差しで彼らに接し、生徒たちも、教師から期待されていることを感じて努力したからだとローゼンタール教授。人の評価とは、被考課者の欠点・短所を見るのでなく、「期待」をどう伝えられるかにかかる。 人事考課の季節は、社員一人ひとりの能力や日頃の仕事ぶりをどこまで深く、公正に理解しているかを、自分たちが見ているより何倍も厳しい眼で、被考課者である社員たちから逆に考課されている時期であることを、管理職やトップは自覚しておきたい。 |
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