コラム


  タイム・イズ・マネー   No.498
 光陰流水のごとし――。まったくである。季節感が年々歳々薄らいできた現代社会。「師走」入りしてもなお一年の終わりが近づいている実感がほとんどしなかったが、今年もあと20日余を残すだけとなると、さすがにお尻がムズムズし始める。

 ▽短い人生は、時間の浪費によって一層短くなる=サミュエル・ジョンソン(文学者、イギリス) ▽過去も未来も存在しない。あるのは現在という瞬間だけ=レフ・トルストイ(小説家、ロシア) ▽明日は何とかなると思う馬鹿者。今日でさえ遅すぎるのだ。賢者は昨日済ませている=チャールズ・クーリー(社会学者、アメリカ) ▽お前がいつか出会う災いは、お前が疎かにしてきた時間の報いだ=ナポレオン・ボナパルト皇帝(フランス) 「時間」の大切さを説く先人たちの名言に、返す言葉のあろうはずがない。

 とはいえ、われわれ現代人だって、時間を効率的に使うため、何かと工夫はしているつもりだ。たとえば買い物。なるだけムダな時間を掛けず、なるだけ多くの商品を見比べながら、なるだけ安い価格で手に入れたいと考える。ネット通販の成長が近年目覚しいのは、消費者のそんなわがままを満足させてくれるからではなかろうか。

 経産省調査によると、日本のネット通販市場は昨年6兆6960億円になった。前年比10.0%の2ケタ増で、2006年比では1.5倍の拡大。他方、チェーンストアの昨年の売上高は12兆8349億円、前年比3.3%減で、12年連続の前年比マイナスを記録した。百貨店売上高は6兆5842億円、同10.1%減で、こちらは13年連続の前年比マイナス。野村総合研究所の予測によるとネット通販の市場規模は2014年に12兆円になるとみられているから、ネット通販が最大の小売市場になるのはすでに確実といえる。

 ネット通販のこうした急成長の理由は、消費者のニーズにマッチしているだけではない。業界自身も新しいサービス方法を相次ぎ展開し、魅力を増やしているからだ。その一例が最近目立つ「タイムサービス」の導入。たとえば会社員や主婦が夕食を終えて一服している午後8時~12時の時間限定で目玉商品を販売するほか、「ランチタイムセール」「ウイークエンドセール」「48時間限定セール」等々、各社が趣向を凝らしてタイムセール戦略を繰り広げている。言うなればこれはネット通販業界における「タイム・イズ・マネー」―― 米国の作家で政治家ベンジャミン・フランクリンが二百数十年前に残した名言に、どうやら新解釈が加わったらしい。

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