コラム


  スランプ脱出   No.486
 残り16試合で11本(16日現在)――「10年連続200本安打」という米大リーグ、マリナーズのイチロー選手の記録達成がほぼ確実視されてきた。昨年、「9年連続200本安打」のメジャー記録を108年ぶりに更新。今季は気が緩んでも不思議ではないのに、高いテンションとコンディションを維持し続ける彼はやはり非凡だと感心する。

 「僕の中のスランプの定義は『感覚をつかんでいないこと』です。結果が出ていないことを、僕はスランプとは言わないですから」 ほかの人が言うと気取った感じが鼻につきそうな言葉も、彼が口にすると「ほほう、そんなものか」と納得してしまう。「苦しい時にベストの状態を思い出すと、理想と現実の大きなギャップを感じて余計に苦しくなる。だから、良くも悪くもない中間をイメージしながら、いまの状態より少し上の地点に目標を設定するんです」―― それがスランプに陥らないための、あるいは陥ったときの、彼の対処法だそうだ。

 好不調やスランプは、スポーツ選手に限らず会社経営者やサラリーマンもたびたび体験する。そのたびに「初心に帰る」「生活習慣や環境を変える」「物事を客観的に分析・判断するように努める」等々、それぞれの方法で乗り切ろうとする。

 日本将棋連盟会長の米長邦雄・永世棋聖は、著書「不運のすすめ」で、一時は無冠に転落した中原誠九段が、スランプからどう脱け出したかの逸話を書いている。

 「中原九段は毎日、夕方になると将棋会館に姿を見せ、控え室で将棋を並べ始める。無冠となっても16世名人の称号を持つ棋士。企業でいえば、社長を何期も務めた人物である。そういう人が、無役になったからといって毎日、新入社員と机を並べて仕事のイロハを勉強するだろうか。まずあり得ない。しかし、中原九段は平然とそれを続けた」 中原九段が「王座」「棋王」の二冠を取り戻したのは、それから間もなくだった。

 スランプから脱け出すために多くの先人から学びたい。ただし――。英語「スランプ(slump)」には、私たち個人の力ではどうにもならない別の意味合いもある。経済成長率の「鈍化」や株価の「下落」など、つまり「不景気」もまた「スランプ」なのだ。

 国民が呆れながら見守る中で行われた民主党代表選。結果はやはり、事前の世論調査通りになった。けれども、ぶっちゃけ国民が望むのは、菅さんであれ小沢さんであれ、的確な判断と強いリーダーシップによる、後者の「スランプ」からの脱出に他ならない。

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