コラム


  消費税問題   No.477
 参院選で大敗した民主党の敗北理由の1つとして、菅首相が消費税問題をわざわざ争点に掲げた失敗が挙げられている。国民というより野党の猛反発を食って慌てた菅首相は選挙戦終盤、「3年間は増税しない」と強調したが、それがまた「発言のブレ」と受け止められ、有権者の支持をさらに落とす結果になったといえよう。

 「消費税」が、論議を避けられない政策課題であることに違いはない。財政危機を救うため、増税は本当に必要なのか、増税分を何に使うのか、等々が問われる。

 その際、消費税の引き上げは低所得者層に対し、より大きな負担を強いるという「逆進性」が大きな争点になっている。たとえば年収300万円と1000万円の人がそれぞれ年間300万円を消費した場合、消費税10%として税額は両者とも30万円で同じだが、年収に対する税負担率は、前者は10%、後者は3%と、大きな格差が生じる。

 これを解消するため、低所得者には税負担分を後で還付(返還)する方法や、食料品や生活必需品については税負担を軽くする軽減税率の採用を、民主党は参院選挙中にも口にした。しかし、食料品、生活必需品に対する軽減税率は高所得者も同じだから、税の実質的な不公平感が解消されるわけではない。

 一方で、そもそも消費税は本当に逆進的かと疑問を投げ掛ける学者もいる。先の10%と3%の不公平さは、1年に限って比較することで生じる誤解に過ぎないというのだ。

 たしかに、短期間で見れば高所得者の消費性向は低い。しかし、所得すべてを死ぬまでに使い切れば、生涯所得に対する税負担率は低所得者と同じだ。もし所得を使い切らず、子供に金融資産や不動産などの遺産を残した場合は、その遺産分に消費税率と同じ相続税を課すことによって税負担の公平性は保たれる。つまり、可処分所得の多寡に起因する税の不公平性は、消費税ではなく別の方法で解決すべきだとの意見だ。

 税の徴収には3つの基本原則がある。1.国民が税負担に不公平感を抱かないようにする「公平性」 2.個人の購買意欲や企業の経済活動に悪影響を与えない「中立性」 3.納税額の計算ができるだけシンプルな「簡素性」。これら3原則をどう保ちながら、国民に徴税の必要性を明確に説明・納得させるかが、政権政党のみならず政治に関わるすべての者の責務だ。ますますねじれた国会運営の中で、政治家が何をどう考え、どう動こうとしているか ―― 国民はすでに先を見据えながら、じっくり監視し始めている。

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