コラム


  数字の受け止め方   No.472
 菅内閣がいよいよスタートした。が、その前にまず驚いたのは、世論調査にみる支持率の急回復ぶりだ。菅氏がまだ国会で首班に指名されただけの先週末、新聞・テレビ各社が実施した調査によれば、菅政権支持率は最高がTBS調査の66.7%、最低のフジテレビ調査でも52.8%と、鳩山政権末期に比べると2.5~3倍にV字回復した。

 16年ぶりの非自民党政権というので注目し期待もした前政権が、わずか8カ月で自滅してしまったことによる失望感とストレスの反動が、今回の首相交代への高い支持率につながったとする各社の分析に異論はない。しかし同時に、マスコミが最近ことあるごとに競って実施し発表する「世論調査」の「信頼性」について、一部識者が最近疑問視し始めている声にも耳を貸す必要が出てきた気がしないではない。

 なぜなら、専門家によると世論調査で信頼度95%以上の結果を得るには3000人以上の回答を得ることが望ましいとされているが、今回調査での各社の有効回答数は最高でも1200人、最低は500人だった。また最近の世論調査はコンピュータで無作為抽出した固定電話に電話する方式を採っているが、いまの日本で昼間、自宅の電話に掛かってきた世論調査に応対できるのは専業主婦か高齢者が大半。外で働く会社員や携帯電話が主流の若い世代の声が一体どう反映されているのか疑わしい。

 とすれば、マスコミ各社が大々的に報道する「支持率」を、そのまま鵜呑みにして物事を判断するのは危険と言えなくなかろう。

 話は変わるが、だいたい数字なんて、人によって受け止め方はさまざま――という面白い例を博報堂生活総合研究所著「生活者発想塾」で読んだ。たとえば1.「オジサン」って何歳? 2.「近所」って自宅から何mの範囲? 3.「一瞬」って何秒? 4.「ちょっと一杯」って何分以内? 5.「猛暑」って何℃以上? 6.「大特価」って何割引? 7.「過去のこと」って何年前? 8.「多数派」って何%以上? 9.「太ったな」って1カ月でプラス何kg? 10.「小銭」って何円くらい?――という問いに、諸兄ならどう答えるか。

 調査による平均値は、1.43.2歳 2.472m内 3.2.4秒 4.48.3分以内 5.33℃ 6.5.1割引 7.5.5年前 8.66.5%以上 9.2.85kg 10.710円。諸兄の感覚とのズレはいかに。

 ちなみに1カ月で「太ったな」と思う体重差は、男性はプラス3.25kgだが、女性はプラス2.44kg。その差810gに敏感な女性心理が映る。だから「数字は人それぞれ」なのだ。

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