買った当初は暇さえあれば愛おしむように手洗いし、ワックスを掛けていた愛車を、近頃はほとんど給油のついでの洗車機に任せている。乗り始めて1年も経てば、そこかしこに、自分の不注意によるものや、知らぬ間に当てられたらしい凹み、擦りキズができる。その傷み具合を、自分で洗車することによって再認識したくないからだ。 しかし最近は、少々の擦りキズなら、放っておくうちに自然に消えてしまう塗装が開発されているそうだ。「自己治療塗料」と呼ばれるこの塗料は、温まると元に戻るやや柔らかめの熱可塑性を備えている。このため洗車キズやドアノブ周りの爪キズ程度なら、通常で1週間、炎天下なら15分間ほどで判らなくなってしまう。 この「自己治癒塗料」の研究・開発で先頭を走っているのは愛知の塗料メーカー「ナトコ」。車だけでなく、パソコンや携帯電話など一部ではすでに実用化された商品もある。先日見たテレビの実験番組では、パソコンの光沢ある塗装面を金属ブラシで無惨につけたキズが、しばらくすると見事に消えてしまった様子に驚いた。 しかし、驚くのはまだ早かった。英国では、飛行機に「自己治癒素材」を使う研究が進んでいるそうだ。飛行機の胴体や翼に何かが当たって小さなキズやひび割れが生じると、その部分で特殊成分が「出血」するような複合樹脂が使われており、その成分が「かさぶた」のように固まることによってキズやひび割れを自己修復し、強度を元の80~90%まで回復させることができるという。「肉眼では見落としそうな小さなキズの、応急処理的修復には有効的」と専門家の評価は高い。 意外と言えば「自己治癒コンクリート」まで開発途上と聞き、驚く。JR東日本が東京大学生産技術研究所などと共同研究しているこのコンクリートには特殊な混和剤が配合されており、ひび割れ部分に雨水などが沁み込むと炭酸カルシウムなどが形成され、割れ目を埋めてしまう。試験では0.2mmのひび割れが46日間でふさがった。 冒頭の「自己治癒塗料」では、衝撃や擦過傷を吸収できるような、柔らかさを持った塗装面にすることが大事なポイントだそうだ。そこで――。 「自己治癒力を高めるのは、心身の状態を柔らかく保ち、感謝と反省の健全な心を養うことが大事」と鍼灸医・中神裕也氏。つまり「自己治癒力」は、科学も人も、キズを受け止める「素材(=心)の柔らかさ」が大事と知って、なぜか得心する。 |
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