コラム


  賢さを   No.453
 「支持できる」46.4%、「支持できない」53.1%――鳩山内閣の支持率は、ついに「不支持」が「支持」を上回って逆転した(民放JNN、25日発表「緊急世論調査」)。

 支持率下落の原因は、鳩山首相が、土地購入をめぐる資金問題で検察当局と全面対決の姿勢を取っていた民主党・小沢一郎幹事長に対して「どうぞ闘ってください」と“エール”を送ったり、同問題で小沢幹事長元秘書・石川知裕衆議院議員が逮捕されたことに関しても「起訴されないことを望みたい」と聞きようによっては司法への政治介入を連想させかねない発言を重ねたなどという、一国の宰相として相応しくない最近の鳩山首相の言動がかなり影響し、国民の失望と反感を買ったものと考えられる。

 先の選挙で歴史的な政権交代を促した国民だが、善し悪しを是々非々で見極める冷静さを持ち始めていることを、最近の世論調査は映していると思う。ただ、同時に今回の世論調査では、世論が形成される過程での「恐さ」もまた、見えた気がした。

 なぜなら、石川議員の逮捕に関し「起訴されないことを望む」と話したという先の表現は、記者会見での全体の発言を聞くと、鳩山首相は必ずしもそうは言っていなかったからだ。にもかかわらずマスコミ各社が、一様に鳩山発言の「部分」だけを切り取って報じた結果、国民が誤判断する原因になったと思えるフシがなくはない。

 記者団から「石川議員の処遇は起訴されても判断しない可能性もあるのか」と聞かれた鳩山首相の、正確な返答はこうだった。「もし起訴されたらという仮定の話に答える必要はないかも知れないが、起訴されないことを望みたいと思うが、どういう状況になるかをもって判断したい」 多くのマスコミが、この発言の前後の流れを無視して「部分」だけを切り取り、かつ「不起訴を望む」と検察当局への圧力を匂わせる積極的なニュアンスに表現に直し、報道していた。各社ほぼ一様だったそうした今回の報道を、「恣意的」とまでは決め付けないものの、物事を無理矢理センセーショナルに取り扱いたがるマスコミの「危険な習性」が働いた例ではなかったかと、筆者は思う。

 小沢幹事長の扱いをはじめ諸懸案に対する言動をみるにつけ、就任以来の鳩山首相の指導力が、私たち国民が当初抱いていた期待に応え切れていないのはたしかだ。

 ただ、日本の政治がいま大事な転換期にあるからこそ、マスコミの報道を無条件に鵜呑みにしない賢さをも、私たちは身につけなければならないと書くのは偏向だろうか。

コラムバックナンバー

What's New
トップ
会社概要
営業商品案内
コラム
大型倒産
繊維倒産集計