コラム


 寅 年  No.450
 謹んで新年のお慶びを申し上げます。本年も倍旧のご鞭撻をお願い申し上げます。

 十二支では、始まりの子年は種を蒔く年、丑年は種が芽を出す年だったが、今年の寅年は芽が勢いよく伸び始める年とか。ぜひそうあってほしいと希うばかりだ。

 寅・虎にまつわる古語・諺が多い。たとえば「君子豹変」も、元々は「大人は虎変す。君子は豹変す。小人は革面す」の言葉に因る。虎も豹も季節の移り目に毛が生え変わり、斑紋が鮮やかに蘇る。その変わり方が一番見事なのが虎、次が豹であるように、大人・君子などリーダーたる者は、根源から改革を推し進める器量を持っているが、小人は単に上っ面を革(あらた)めているに過ぎない、の意。それを最近「虎変・豹変」するのは悪いことだと解釈する向きが増えているのは、本来の意味に照らせば誤用だ。

 大切な財産を「虎の子」と喩える表現は、動物の中でも虎は、母虎が子虎をとても大事に守り育てる様子から来ている。その子虎の毛皮は非常に柔らかで、高価な貴重品。だから、子虎の毛皮を手に入れるには、勇猛な母虎と戦うだけの、よほどの覚悟が必要――との意味から「虎穴に入らずんば虎児を得ず」の諺が生まれた。

 「虎の威を借る狐」の諺も広く知られるところだ。虎に捕えられた狐が、虎に向かって言った。「私を食べてはいけません。こう見えても私は、天帝から認められた獣の長。私を食べると天帝の怒りを買い、大変なことになります。嘘だと思うなら、私の後ろをついていらっしゃい」 そう言って歩き始めた狐の後ろをついていくと、なるほど狐を見た獣たちはみんな後退りし逃げ出したので、虎はせっかく捕えた狐を放した。実は獣たちが逃げ出したのは、狐の後ろを歩く虎の姿を見たからだったのに。

 中国の説話集「戦国策」には「三人市虎をなす」の諺もある。他国へ人質に送られることになった家臣の龐葱が、出発に際し君主の恵王に言う。「誰かが、市場に虎が出たと言ったら、王は信じますか?」「いや、信じない。あり得ない」「2人が同じことを言ったら?」「う~ん……半信半疑だ」「では、3人が同じことを言ったら?」「それは信じるだろう」「そう、あり得ないデマでも、3人から聞くと真実と思い込んでしまうものなのです。どうかお気を付けください」 諸兄は、身に覚えがないか?

 そして「騎虎の勢い」も。「途中で降りたら食われるだけ。大願成就のため最後まで頑張れ」の意味だが、問題は、鳩山政権への国民のエールや辛抱が、いつまで続くかだ。

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