「冗談じゃない!」と振り上げた拳を、翌日の会談後、いともあっさり下ろした単純さを理解できないが、前原誠司国交相が事前説明のないまま羽田空港のハブ化構想を口にしたことに、成田空港を抱える森田健作千葉県知事が憤慨し、靴で床を踏み鳴らしてまで怒る様子をテレビで見た。他方で同じ日、関西空港を抱えて同様の立場にある大阪府の橋下徹知事は、「羽田のハブ化」に理解を示した。森田知事には、パフォーマンスよりも利用者の利便と国益を優先する考えの広さを持ってほしいと思う。 それにしても前原大臣の突進が止まらない。八ッ場ダムの建設中止のほか全国48ダム事業の一時凍結、日本航空の自主再建策の見直しなど、重要案件について大胆な新判断を次々下している。というので「新政権はこれまでのような陳情型では通用しない。地域のためという理屈でなく、日本のためになるとの論を張ってほしい」と府の幹部に理論武装を指示 (朝日新聞14日付) した橋下知事は、さすがにクレバーだ。 事前の「根回し」が、「足りない」と言うより最初からその気がまるでないように思える「前原戦法」。国民の目にはその姿が、自公政権時代には根回しに始まり根回しで終わっていたような「政官財、癒着の構図」を断ち切ろうとする新政権の新鮮さと映り、期待される半面、現実に政権を担当してみて実感するであろう経験不足から来る「幼さ」に、先行きの不安を感じている向きも少なくないのではなかろうか。 「根回しは、日本人特有の文化で、物事を公の場で決めない、不透明で卑怯な行動であるという誤解がある」と読売新聞(2009年3月31日付)に寄せたのは、かつて鈴木宗男事件で注目された元外交官・佐藤優氏だ。「米国でロビイストやコンサルタントという職業が成り立つのも、根回し文化があるからだ。どの国家や社会にも存在するマナー。根回しの本質は、事前に正確な情報を交渉相手方と共有することだ」 「根回し」という言葉に、つい拒否反応に似たな思いを抱きやすい。けれども――。 大きな木を植え替える時は、半年〜1年前に根の周囲を掘り、太い根を切っておく。すると、そこからまた新しい根が生え、植え替え後に養分を吸収し易くなる。「つまり、当の木に、これから移植させてもらいますよと了解を得ておくことが大事なんですな。それが“根回し”の語源」と、出入りの植木屋に先週教わったばかりだった。 時と場合によりこそすれ、「根回し」を疎かにすることの危険さも認識しておきたい。 |
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