キュウリ、ナス、ピーマン、スイカ、枝豆、イチジク……地方によって違いはあるが、7月前後に「旬」を迎える野菜や果物だ。旬の物はとくにビタミンやミネラル、植物繊維が豊富で、栄養価も高いといわれる。 しかし最近はこうした野菜・果物の、初物や旬の時期が、昔に比べるとずいぶん違ってきたのはご存知の通りだろう。たとえば、植物学的には果物に不分類される夏野菜の代表格トマトは、本来の夏から秋にかけてより12〜6月にかけた「冬春トマト」のほうが、現在では収穫量が多いそうだ。 言われてみれば、スイカも初物はすでに昨年暮れに小売り店頭に並んでテレビカメラのライトを浴びていた。イチゴは昨秋から市場に出回り始め、タケノコは10月にはすでに初物が店頭に並ぶ。こうした収穫時期の早まりはもちろん栽培技術と物流システムの発達が背景にあるが、食べ物に限らず初物や旬の物を1週間でも、いや1日でも早く先取りして消費者に届けようとする動きが、最近とくに活発化している。 流通業界で広まっている「バーゲンの前倒し」現象もそうだろう。月初に発表された大手百貨店5社の6月売上高(速報)では、各店とも前年割れが続いてはいるものの、マイナス幅は縮まった。そのささやかな好転の理由が、例年7月1日から始めていた夏物バーゲンを、今年は1週間ほど早めたのが寄与したことを各店が認めている。 「逐次の商法」という言葉が江戸時代にはあった。いわく「商売の時節を考ヘ、只時に先立ちて売買するをいふなり。その変に先立ち流行に後れざるを肝要とす」(作家・青野豊作著「商売の秘訣――江戸商人の知恵に学ぶビジネスのノウハウ」から)。時代の変化や人々のニーズを先取りすることの大事さを説いたもので、昨今のバーゲンの前倒しも「逐次の商法」を代表する商売の極意の一つだ。 ただ、バーゲンの前倒しはせっかくの本番時期に低価格―低利益を余儀なくされるばかりか、続く秋物もバーゲン時期を早め、さらに冬物、春物もというような玉突き現象を起こしてバーゲンの年中行事化を招来しかねない。その結果、物の「正価」とは一体何なのかという疑念や価格への不信感を、消費者に持たれる危険性を恐れる。 そんな側面をも持つ「逐次の商法」だからこそ、先の一節にはこんな言葉が続く。「利に走り過る事を堅く警むべし」。欲張りすぎ、深追いすることがない節操が大事だ。 |
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