「新型インフルエンザ」が沈静化してきた。26日現在の世界の感染者は46カ国・地域で計1万2954人、死者は4カ国97人(WHO調べ)。日本国内では9都府県で354人の感染が確認されたが、死亡者はなく、17日以降減り始めた新たな感染者数も26日は2人にとどまった。またピーク時に5133校を数えた幼稚園や学校の休校は今週明けから授業再開に踏み切った先が多く、流行が終息しつつある様子がうかがえる。 どうやら懸念されたほど大規模かつ深刻な状況に至らなかったことに安堵するが、他方、落ち着きを取り戻し始めてから改めて振り返ると、今回の「新型インフルエンザ」では、関係者の初期の状況判断が的確でなかったうえ、その後も事態の進展を必要以上に大げさに考え過ぎたのではないかとの声も聞こえ始めている。 第1は、今回の「新型インフルエンザ」を、当初は死亡率が高い「強毒性」ではないかと疑い、空港での「水際作戦」など徹底的な感染拡大防止体制を敷いたことだ。迅速な対応に超したことはないが、その後、通常の季節性インフルエンザと同程度の「弱毒性」と判明したにもかかわらず、防疫体制などの切り替えがスムーズに運ばなかったため、「新型インフルエンザ」に対する国民の、不安感を超えた恐怖感さえ煽り、過剰反応を引き起こす結果になった――と指摘する専門家が少なくない。 おかげで、国民生活にさまざまな影響が出た。関空・成田など4つの空港内に店舗を構えていたみやげもの店が人出の減少=売り上げ急減で倒産したほか、近畿・京都地区の旅館・ホテル業界では修学旅行を含めて36万泊分のキャンセルが出て、経営に深刻な打撃を与えている。企業が準備していた多くの催事や人気歌手のライブなどが、相次ぎ中止や延期に追い込まれたことによる経済的損失も決して少なくない。 マスクが薬局の商品棚からあっという間に消えた早さには驚いたが、実はマスクは、ウイルスを他人にうつさない効果はあるものの、非感染者がウイルスの侵入を防ぐ予防効果はあまりないことを、やっと手に入れてから知ったことに、もっと驚いた。国民に対する、そんな基本知識の周知さえ満足でない現状こそ問題ではなかったか。 「冷静な対応を」と麻生首相が政府広報で早々に呼び掛けた。が、首相が顔を出すほどの話ではなかったという情報分析の甘さを、かえって露呈したのではあるまいか。「どうせ選挙を意識したパフォーマンスさ」と受け取った国民のほうが、よほどクールだ。 |
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