先週から実質的にスタートした家電の「エコポイント」制度だが、改めて調べるほどにその意味・目的・効果がかえって分からなくなってくるから不思議だ。 国が示すその目的は「省エネ性能の高い『グリーン家電』の普及促進を通じて、地球温暖化対策の推進、経済の活性化、および地上デジタル放送対応テレビの普及を図ること」だそうだが、つまるところ最大の狙いがエコ推進なのか、消費刺激なのか、地デジ普及なのかが不明確なうえ、対象商品がなぜ「エアコン」「冷蔵庫」「地デジ対応テレビ」の3商品に限定されているのか、その理由がまずよく分からない。 第2は、それら3商品に付くエコポイント数が、より大型で高額な機種ほど多く付くよう設定されている理由も理解しにくい。毎日新聞によれば、例えば手持ちの03年型の29インチブラウン管テレビを、最も高いポイントがつく08年型冬モデルの46インチ以上の地デジ液晶テレビに買い換えると、年間消費電力は130kw時から185kw時に増えてしまう。「エコ推進」という制度の趣旨に反する大きな矛盾だ。 第3には、そうして集めたポイントを、どんな商品・サービスと交換できるかが、実はまだ決まっていない。@省エネ・環境配慮に優れた商品 A全国で使える商品券・プリペイドカード B地域振興に資するもの――という大枠に沿うものの「具体的商品はこれから考える」というのでは、あまりに拙速な制度のスタートではないか。 それだけではない。エコポイントの運用基金を管理する法人「グリーン家電普及促進基金(仮称)」とその事務局は、5月21日に公募を締め切ったばかりで、まだ発足していない。したがって、いま商品を買って手に入れたエコポイントの権利は、後日に正式申請する時まで領収書や保証書などを手許に保管しておかなければならないが、さて、事務局発足後に殺到するであろう手続きの処理が、果たしてスムーズに行われるかどうか。「消えた年金」問題で味わった社保庁への腹立たしい思いが脳裏を過ぎる。 「買い替え時の廃棄物処理を含め、どれだけCO2排出削減につながるか不明確。エコポイントと言っても、『エコロジー』より、不況下の家電業界を救済する『エコノミー』が優先された印象が強い」と話す植田和弘・京都大学教授(環境経済学)の指摘(毎日新聞5月15日付)に同感だ。このエコポイント制度に用意された予算2946億円は、もちろん私たちの税金。もっと優先されるべき金の使い方が、ほかにあるのではないか。 |
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