コラム


 安定志向  No.417
 5月の連休明けに起きると言われる「五月病」。新入社員諸君の調子はいかがだろうか?

 今年の新入社員は「エコバック型」だとか。そのこころは、酷使すると長持ちしない=辞めてしまうが、意外に耐久性に優れ、活用次第で有用となる。小さくたためて便利だが、使うときは大きく広げる=育てる必要がある――。日本生産性本部が毎年命名し発表している新入社員のタイプによると、今回は例年になく地味なイメージだ。

 彼らをひとまとめにカテゴライズするのもどうかと思うが、こうした堅実な傾向はキリン食生活文化研究所が行なった新社会人へのアンケート調査(2月23日〜3月15日に実施)でも浮き彫りになっている。「一番気になること」を聞いたところ、男女とも圧倒的に「経済不安」(40.5%)で、リストラ報道などが新社会人にもプレッシャーになっていることがうかがえる。仕事観での回答では「入社が決まっている会社でずっと働きたい」(55.4%)が昨年に続きトップ。4年前の05年調査(34.6%)から見ると何と20ポイント以上もアップしており、不況の嵐の中にあって、同じ会社に長く勤めたいという安定志向がうかがえる。その一方で、「会社では是非出世したい」(43.6%)も昨年から5.0ポイント上昇し、堅実ではあるが内に秘めた野心も垣間見える。半面、調査を開始した05年のトップだった「仮に転職しても自分のやりたい仕事を続けたい」と回答した新社会人は32.7%にとどまり、4年前から見て15.8ポイント低下したことは興味深い。「現実は厳しい」という意識がかなり働くようになったのだろう。

 いずれにしても、予想をはるかに超える急速な不況の進行が、何よりも安定を願いたいという心理が彼らの深層に入り込んだのは間違いない。就職活動においてはこれまでの売り手市場から一転、完全な買い手市場となったことで、さぞ苦労したことだろう。しかも念願の就職内定が決まっても、「内定取消」だの「自宅待機」だのといった不測の事態に見舞われた。静岡市の造船大手、カナサシ重工では新卒入社予定の19人が内定を取り消され、また福井市の自動車内装材メーカー、セーレンでは入社式が終わった後、関連会社を含めた72人に対し半年間の自宅待機を命じていたことが発覚した。こうした企業の対応をマスコミが報じるたびに、たとえ当事者ではなくても、まだ20代前半の若者にとっては切ない思いが募ったであろう。

 「安定」「堅実志向」――いいではないか。フレッシュマンにエールを送りたい。

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