改正産業活力再生特別措置法が先週22日、参院本会議で可決・成立した。 景気の急激な悪化で業績が低迷し、一時的に資金繰りが窮屈になった大企業に対して、資金の借り入れや社債の発行などがスムーズに行えるように、国が、日本政策投資銀行による出資という形で公的資金を注入し、経営建て直しを支援する新制度が、今回の改正では盛り込まれたのだ。 重ねて書くが、対象はあくまで「大企業」。間接的にせよ公的資金の注入を受けるには、いくつかの「資格・要件」が設けられている。原則として雇用規模が連結ベースで5000人以上、下請け企業や取引先企業の従業員数が合わせて5万人以上。また独自性のある商品によって3〜5割という高い市場シェアを持っていること。さらに、急激な景気悪化によって売り上げが四半期で20%以上落ち込み、自己資本も減少していること――等々だ。早い話、もしその企業が倒産するようなことになれば、日本経済全体や国民生活に少なからぬ影響を及ぼす恐れがある企業が対象に限定されている。 3年後に業績向上が見込める事業計画を経産省に提出し、認可されれば、他の民間金融機関との協調融資を条件に政策投資銀行が出資して資本を増強、必要資金の調達を容易にさせる。もし対象企業が倒産するなどで損失が出た場合は、その5〜8割を日本政策金融公庫が公的資金で穴埋めする――という仕組みだが、その「公的資金」とは当然国民の「税金」だから、国民も決して無関心でいられない。 「別名『電機業界救済法』とも呼ばれる」と日経新聞が指摘する通り、現在、今改正法の成立を受けてその適用による資本増強を検討している企業は、総合家電の日立製作所、音響のパイオニア、国内唯一のDRAMメーカー「エルピーダメモリ」など家電関連に集中しており、東芝も申請を検討していると伝えられる。 「100年に一度の危機」への緊急避難策――というが、今回の救済策では、事ここに至った経営責任を不問にしたままである点に、とくに批判が少なくない。「経営者が国頼みになって甘い経営を続けるモラルハザード(経営倫理の喪失)が懸念されるほか、本来、市場から退出すべき企業を政府が救済し、産業全体の生産性が低下する恐れもある」 との中日新聞23日「社説」に同感だ。「産業活力」の再生を謳うなら、その「石垣」の1つ1つである中小・零細企業への支援こそ、もっと迅速に、手厚く講じられるべきだ。 |
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