コラム


 スズメ考  No.405
 日本に生息するスズメの数はいま推定で約1800万羽。20年間で最大80%、50年間では90%減ったかも知れない――と先日、新聞が伝えていた。

 調べたのは立教大学・三上修博士の研究グループ。秋田・埼玉・熊本3県の40カ所を選び、一定地域内の巣の数(平均密度)を算出し、推算したそうだ。素人考えではかなり大雑把に思うが、「数倍の範囲内」という誤差は、学術的には高い精度らしい。

 スズメが減った一番の原因は子育て環境の変化、とくに住宅環境の変化にあるという。人家の近くに住むスズメは、主に屋根瓦の隙間や、屋根と軒下の、その名も「スズメ口」と呼ばれる三角形の隙間、戸袋の中などによく巣を作る。ところが最近の日本家屋は冷暖房効果の気密性を高めるため、そういう隙間を塞いでしまった。「愛の巣」作りの場を奪われては、スズメの世界で少子化が進むのは当然といえば当然だ。

 スズメは米を食べる害鳥というので、その駆除に積極的に取り組まれた時期があった。中国でも1954年、8万人の少年による「スズメ取り突撃隊」が結成され、巣が徹底的に壊されたり、北京市内だけで約11億羽が捕えられたため、周辺では1羽のスズメさえ見なくなったことがある。その結果――。米の収穫は、逆に大幅に落ち込んでしまったそうだ。スズメが食べてくれていた害虫が増え、雑草も蔓延ったからだ。

 商売繁盛と五穀豊穣の神様を祀る京都・伏見稲荷大社の参道には、名物の焼き鳥を売る店がかつては6、7店あった。が、うち1店がことし正月の三が日でその販売をやめ、扱う店は1店だけになった。近年は国産スズメがほとんど手に入らないうえ、99年に輸出をやめた中国産スズメも、冷凍保存していた在庫が底を尽いたからだ。

 集まればチュンチュンとうるさいスズメのさえずりだが、耳にしなくなると寂しい。その代わり、である。昨日からにわかに騒がしく鳴き始めたのが「政界スズメ」たちだ。「怒るというより、笑っちゃうぐらいあきれる」と言った小泉発言を受け、「これで麻生離れが加速しそう」と真正面から論評する向きがある他方で、「自民党の人気回復を狙った究極の起死回生策?」「小泉サンは引退を思い直したのでは?」「自身にも関わる『かんぽ問題』から国民の目をそらすのが目的?」等々、その喧しいこと。

 「スズメの涙」ほどの定額給付金さえ、これでまた出るのか出ないのかあやしくなってきた現下の政治の混迷ぶりに、笑っちゃうほどあきれているのは、私たち国民だ。

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