「人生は、退屈すれば長く、充実すれば短い」――まだ少し気が早いかも知れないが、年末が近づくと聴かれ始めるのがベートーベンの交響曲第9番。冒頭は、その「合唱付き」の原詞者で、ドイツの詩人・思想家シラーの言葉だ。 「人生」と「時間が経つ早さ」の関係については「ジャネーの法則」が知られる。フランスの哲学者ポール・ジャネーが提起したのを甥のピエール・ジャネーが著書で紹介した考えで、「人間の、生涯のある時期における一定時間の心理的長さは、その人のその時までの人生の長さに逆比例する」というもの。平たく言えば、1年の長さは、その人が10歳の時は人生の10分の1だが、50歳になれば50分の1に当たるのだから、50歳の人は10歳だった時より時間が経つ速さを5倍速く感じる、という論理だ。 作家・渡辺淳一氏は、その時間が経つ体感的速さを「川の流れ」に喩えた。20代はちょろちょろ流れる小川、30代で川になり、40代で急に早くなった流れは、50代では激流、60代では滝のごとしと。諸兄は流れのどの程にいらっしゃるのだろうか。 だからこそ、年齢を重ねるにつれ大事さを増す日一日の過ごし方。イギリスにはこんな格言がある。「一日はトランクのようなもの。やり方さえ知っていれば、その中に2倍の荷物を詰め込むことができる」 たしかに、旅慣れた人が上手に詰めたトランクの中には、出してみると驚くほどたくさんの荷物が入っている。大きな荷物の間に、小物を巧みに詰めているからだ。「時間」の使い方も、実は同じ。 ビジネスマンの1日は2つの時間枠に大別されよう。仕事などスケジュールが定まった「予約済み時間」と、時間の定めがない食事や睡眠など生活のための「活用できる時間」。しかしスケジュールをつぶさに点検すると、売れっ子芸能人でもない限り、あちこちに5分、10分といった「隙間時間」が必ずあるはずだ。これが「時間の穴」。 その「時間の穴」を上手に紡げば、1日に30分あるいは1時間程度の時間を捻り出すことは不可能ではなかろう。もし1日1時間を生み出すことができたなら、1年で365時間。これを7時間の睡眠時間を差し引いた1日17時間で割れば21.4日。ほら、少し短いとはいえ1年を13カ月にすることだってできるではないか。 「時間が経つのが速いと感じる人は、人生が分かってきたからだ」(イギリスの小説家ジョージ・ギッシング)。であるならば、「時間の穴」を、いま一度見直してはどうか。 |
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