コラム


 「ヒルズ族」の凋落  No.387
 これも1つの「ブランドの失墜」と言うべきだろうか。「ヒルズ族」の凋落ぶりが昨今、あれこれマスコミの話題にされている。

 「六本木ヒルズ」――計画から竣工までに17年間の年月と約2700億円の総事業費を投じて建設された。12万uに及ぶ広大な敷地に、地上54階地下6階建て(最高地上高236m)のオフィスビル「六本木ヒルズ森タワー」を中心として、超高級マンション、有名ブランドショップ、映画館、レストラン、銀行、病院、郵便局、ホテルなど230もの商業施設が集まる。もはや大都会の中の「小都市」と言ってよかろう。

 当初は、ヤフーや楽天を筆頭に多くのIT企業、ベンチャー企業が競うように入居した。またそれら企業の若き社長たちがその成功を誇示するかのようにヒルズ内のマンションに住み、「勝ち組」の象徴として庶民の羨望の的になった。

 それからまだ5年。にもかかわらず近年、「ヒルズ」を去る企業が少なくない。ヤフーは昨年1月、「六本木ヒルズ」の向かいに完成した「東京ミッドタウン」(地上54階地下5階、地上高248m)のテナントとして転居し、楽天も同11月、品川に竣工した28階建てビルを「楽天タワー」として借り切り移転した。ほかにも「ヒルズ脱出」を図るテナントが続き、最近の入居率はかろうじて90%を超す程度だそうだ。

 企業・個人を含めた「ヒルズ族」の凋落は、ホリエモンこと堀江貴文氏主宰の「ライブドア」の蹉跌がきっかけになったことはいうまでもない。その後、村上世彰氏の「村上ファンド」、折口雅博氏の「グッドウィル」グループと入居企業の不祥事が相次いで表面化、「ヒルズ」ブランドを大きく傷つけた。そしていままた米リーマン・ブラザーズの破綻に伴い、「ヒルズ」に入居するリーマン・ブラザーズ証券、リーマン・ブラザーズ・ホールディングス両社が厳しい経営環境に追い込まれている。

 「ヒルズの呪い」という都市伝説があるそうだ。「六本木6丁目の六本木ヒルズ」という「6並び」はキリスト教では不運の数字であるとか、あの場所はかつて長府毛利家の上屋敷で、武林唯七ら赤穂浪士7人が切腹した場所でもあるし、また4つの寺があった跡地だから――等々、ネット上では諸説が姦しい。

 非科学的なこじつけはともかくとして、「ヒルズ=小高い丘」だけに、登り詰めればやがて下り坂も覚悟せねばなるまい、という駄洒落には、思わず納得しそうにならないか。

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