コラム


「中国餃子」の教え No.354
 2月5日現在で2316人(厚労省まとめ)に上るといわれる中国産冷凍食品による(と疑われる)健康被害。問題の有機リン系農薬「メタミドホス」や、新たに検出されたという「ジクロルボス」がいつ、どこで混入したのか、それは生産・流通過程でのミスなのか故意なのか――原因究明にはまだ時間が掛かりそうだが、短期間で分かったこともある。食料自給率が39%足らずの日本では、私たちが毎日さまざまな料理を乗せて囲む「食卓」の脚が、いかに脆くて危なっかしい状態にあったのかという実態だ。

 小売店頭では消費者の不安を取り除くため、問題の「天洋食品」製品だけでなく中国製食材のほとんどを撤去する動きが広がった。しかし、中国からの食品輸入が年間493万5600tと10年で2.4倍に増え、食品総輸入の25%を占めている現在の日本では、「中国製品外し」が長引けば、「売り場がというより、日本の食生活そのものが成り立たなくなる」という某大手スーパー首脳の指摘は、決して大げさではない。

 昨年6月、「安い冷凍食品を喜んで買う消費者も悪い」と口走って顰蹙(ひんしゅく)を買ったのはあの「牛肉ミンチ偽装事件」の当事者だ。「責任転嫁も甚だしい」と国民は激怒した。しかし、「安さ」を強く求める消費者ニーズが、食品の輸入、とりわけ中国依存を高める背景にあったとすれば、彼の暴言は実は核心を衝いていたと言えなくもない。

 もう一点、今回の事件をきっかけに認識すべきことがある。「フード・マイレージ」というモノサシで計ると、日本は地球の環境破壊にずいぶん加担しているという事実だ。「輸入量×輸入相手国から自国までの輸送距離」の算式で計算される「フード・マイレージ」の日本のそれは、食料自給率が低いため9002億トン・キロメートルと、韓国やアメリカの約3倍、イギリスやドイツの約5倍、フランスの9倍に及ぶ。

 大量の食料を遠い外国から運べば当然、それに伴う温室効果ガスの排出が増える。農業水産政策研究所の試算によると、日本の食品輸入に伴う排出量はCO2換算で約1700万t(2001年現在)と推計され、これは国内での食料輸送に伴う同900万tのほぼ倍に当たる。つまり日本は、安い食料を手に入れるため、他方では大量の温室効果ガスを撒き散らしていることになる。そうした実情に「知らぬ顔」でよいわけはない。

 食品の安全性という問題ばかりでなく、わが国の食料自給のあり方や、ひいては環境破壊など多面的な視点で今回の事件をとらえ、「今後」を考える姿勢が必要ではないか。

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