コラム

 「青」  No.352
 「オール・ブルー・アイズ」がニックネームだった歌手フランク・シナトラにちなんでつけられた名前は「フランキー」。オーストラリア東部ゴールドコーストの動物園「ドリームワールド」で生まれた青い目のコアラが先日、報道陣に公開された。コアラの目は普通茶色だから、遺伝子の突然変異などで偶然、青くなったと専門家はみている。現在、生後9カ月だが、一般にお披露目されるのは数カ月先だとか。青い瞳を持つ世界初のコアラは間違いなく人気者になるだろう。

 「青」は世界で最も好まれる色であり、「成功」をイメージするとも言われる。

 青い大きな看板が目印の「洋服の青山」。創業者の青山五郎氏が先週、亡くなった。77歳だった。1930年(昭和5年)、広島県府中市生まれ。旧制府中中学を卒業後、大学進学を望んだが病気で断念し、大蔵省専売局(現日本たばこ産業)の府中支局に入社した。しかし、進学できなかったコンプレックスから「30歳になって世間から信用されるようになったら、商売で一旗揚げたい」と願い、64年に兄弟3人とともに「青山商事」を設立した。「日本一の洋服屋」を標榜した青山氏には、当時まだまだ高価だったスーツを、「サラリーマンが安心して消耗できる値段で売りたい」との思いが強かった。

 同社の飛躍のきっかけとなったのが、74年に出店した「洋服の青山 西条店」。日本初の郊外型店舗だった。その2年前、青山氏はボランタリーチェーンの仲間と米国へ視察に出かけ、衝撃を受けた。町の中心部から100キロ離れた荒野の真ん中に立っている巨大ショッピングセンターに、買い物客が続々とマイカーでやって来るのだ。モータリゼーションの影響を目の当たりにし、いずれ日本にもこの波が来ると確信。帰国後、車社会を念頭においた店づくりを目指した。その後の快進撃は書くまでもなかろう。

 青山氏を知る人の多くが「先見力・決断力・実行力に優れた人だった」と口をそろえる。ダーウィンの説に従えば、「環境にうまく適応した突然変異だけが生き延びることができる」が、会社も同じである。そして、企業にとって突然変異を誘発させるものは、経営者の先を見る目と決断力、実行力以外にはない。

 松下電器産業の大坪文雄社長も決断と実行の人だ。社名から「松下」の名をはずし、ブランド名の「Panasonic(パナソニック)」に変更する。競争が激化する海外市場での存在感を高めるための決断。販売店に掲げられた「Panasonic」のロゴもまた青色である。

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