コラム


 計 算  No.325
 クールビズを提唱するなら、もっと軽装で国民に接すればよいのにと思う。最近の安倍さんは、ネクタイは外していても透明の鎧兜を着込み、自分を守ろうと必死なように映る。本当は暖かいであろう彼の人間性が、まるで伝わってこないのが残念だ。

 「野党で過半数を確保できなければ、政界を引退する」と民主党の小沢さんが言い切った。これまでの情勢分析で得た「手応え」の表れか、逆に不安を覚えたからの「覚悟」表明なのかは分からない。いずれにせよ野党は、失点相次ぐ安倍政権に対して、参院選で与野党逆転を実現する千載一遇の好機を迎えていると言えそうだ。

 「千載一遇」――その「千載」は「千年」のことだが、「載」は本来、数字の位取りの「10の44乗」の名称である。位取りの名称はご存知の通り「一・十・百・千・万」と1桁ずつ増えた後は4桁に変わり、「億・兆」までは日頃耳にする。さらに「京(けい)・垓(かい)・秡(じょ)・穣(じょう)・溝(こう)・澗(かん)・正(せい)・載(さい)・極(ごく)・恒河沙(こうがしゃ)・阿僧祇(あそうぎ)・那由他(なゆた)・不可思議」と続き、最大は「10の68乗」の「無量大数」で終わる。逆に小数点以下は、馴染み深い「分・厘・毛」以下は「糸(し)・忽(こつ)・繊(せん)・沙(しゃ)・塵(じん)・埃(あい)・渺(びょう)・漠(ばく)・模糊(もこ)・逡巡・須臾(しゅゆ)・瞬息(しゅんそく)・弾指(だんし)・刹那・六徳(りっとく)・空虚(くうきょ)・清浄」と小数点以下21桁まで名付けられている。

 この日本式単位を広めたのは、江戸時代の数学者・吉田光由。中国の数学書「算法統宗」を手本に考案し、寛永4年に出版した「塵劫記」の中で紹介した。「塵劫記」は、算盤を使った計算の仕方や、計算の基本である「九九」、また「ねずみ算」をはじめとする計算法などを分かり易く解説した日本で初めて集大成された数学書である。庶民にも広く読まれ、明治に「和算」が衰退するまでの250年間に、「○○塵劫記」「塵劫○○」など類似の書名で出された刊行物は400〜500種に及ぶという。

 算盤が、日本の日常生活の場から姿を消して久しい。他方で、欧米や東南アジア諸国では、算盤は右脳の発達を高める方法として効果的というので、初等教育授業に採り入れられている。業界によると、いま世界48カ国に算盤が輸出されているそうだ。

 買い物をすれば端数の小銭を足して払い、お釣りをキリ良く受け取るよう心掛けてきた日本人。それがいまカードや「お財布ケータイ」を使い、計算に無頓着になった。日本人の「脳力」がどんどん低下しつつあるようで、行く末が怖い――などととりとめのないことを、各党はいまどんな票読み計算をしているのだろうかと考えながら、思った。

コラムバックナンバー

What's New
トップ
会社概要
営業商品案内
コラム
大型倒産
繊維倒産集計