2月の発刊以来、実に60万部を超すベストセラーになっている「鈍感力」(集英社刊)。著者の渡辺淳一氏によれば、「鈍感力」とは、基本のところでは鋭敏さや見識を持ち、その上で能力をさらに伸ばす推進力、あるいは落ち込まない復元力をいう。「鈍感力」が必要だと渡辺氏が意識したのは少年期。「戦後すぐの混乱の中で、食べるものもない時、闇市などで逞しく生きていくやつに、<すげえ><えらい>と憧れました。どんな時にも明るく前向きに生きていくしたたかさが必要だと思いました」 同じく2月に発売され、売れ続けているのが米大リーガー、松井秀喜選手が書いた「不動心」(新潮新書刊)である。出版界ではスポーツ選手が書いた本はヒットが出にくいというジンクスがあるそうだが、それを見事に打ち破った。野球論にならず、「松井流」のさまざまな「心の構え」に終始しているところが、売れている理由だろう。読者の4割が女性というのも、スポーツ選手が書いた本では非常に稀なケースだ。 「5.11を乗り越えて」――スライディングキャッチに失敗して左手首を骨折した、ちょうど1年前の5月11日を回想するところから本は始まる。あのケガで松井選手は、誇りだった連続試合出場記録が1768試合で途切れ、125日間も戦列から離れることになった。骨折後しばらくは、体を動かすと振動で骨が固まらないとの理由で医師からは、手首のリハビリどころか体そのものを動かすことを禁じられた。ひたすら我慢を強いられる中で彼は、「ジャンプをする前には体を縮める。そうした準備行動をしなければ、決して高く飛び上がることはできない。いまは体を縮めてジャンプの準備をしているんだ」と気持ちを切り替えた。 松井選手は、自分でコントロールできることと、できないことを峻別する。「メディアや人の心、そして過去の自分もコントロールできない。しかし、未来の自分はコントロールできる。<どうにもならないこと>ではなく、<いま自分にできること>に集中すれば、きっと前に向かう選択肢があるはずだ」 「人間万事塞翁が馬」が信条だという。骨折後、父親からFAXで何度も送られてきた言葉だ。選手生命を左右するほどの大ケガを負ってもなお、いつか「骨折してよかった」と言える日が来ると信じている。だから、決して絶望しないのだと。逞しく生きていくための免疫力を備えた「松井秀喜」という人物こそ、まさに「鈍感力」の人である。 |
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