「権限が、一人に集中し過ぎませんか?」と記者団から投げかけられた質問に、「いまは緊急事態。構造改革は独断専行でやるしかありません」と、復活した「カリスマ社長」は少し気色ばんだ。いかにも彼らしい。 「ユニクロ」は先週、玉塚元一社長が8月末で退任し、実質的な創業者であり3年前に社長を玉塚氏に譲って自身は会長職に就いた柳井正氏が、そのまま社長を兼務するトップ人事を発表した。柳井氏は否定したが、就任時に掲げた「3年後に年商4500億円」の目標を達成できなかった玉塚社長の、経営責任を問う事実上の「解任」。久しぶりにテレビで観る玉塚氏の、ずいぶん頬がこけ、やつれた感じが、痛々しかった。 が、唐突ではあったけど驚くニュースではなかった。「いずれは…」と予想していた諸兄も、少なくなかったのではないか。先の社長交替後もテレビのドキュメント番組などで時々見かけた光景は、例えば会議の場で、同席する玉塚氏の背中越しに、厳しい口調で部下に指示を飛ばす柳井氏の姿。天下の上場企業「ファーストリテイリング」はやはり、どこまでいっても「柳井商店」なのだという印象を拭い切れなかった。 「玉塚君は、安定的に成長したいという思いが強かったが、私はもっと変化して成長していかなければいけないと考え、そうした<思い>の違いはあった」と柳井氏。著書「一勝九敗」の中で彼はこう書いている。「経営は試行錯誤の連続で、失敗談は限りなくある。経営環境は目覚しいスピードで変化していく。そのスピードに追いつきながら経営を続け、会社を存続させていくには、常に組織全体の自己革新と成長を続けていかなくてはならない。成長なくして企業としての存続はない」 3年前、柳井自身の発案ながら多くがその進出に首を傾げた「野菜ビジネス」も、彼にとっては単なる「限りなくある失敗」の1つに過ぎず、「要は、失敗と判断したときに<すぐに撤退>できるかどうかだ」(同書)という範囲の問題だったのだろうか。 彼はこうも書いている。「ワンマン経営はマンネリ化を早める。一人の人間が全部決めてやるということは、マンネリ化する時期が早まることを意味する。時代を担う人たちも育成できない」 3年前、柳井氏が本当は社長を任せたかった当時の副社長は、迷った末、退社して独立。玉塚氏も「他の企業で自分の力を試したい」と言う。ユニクロは、どこへ行くのか。 |
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