いろんな「勘違い」があるものだ。 料理番組で、調味の基本は「さしすせそ」だと言われる。「さ」は砂糖、「し」は塩、「す」は酢、「そ」は味噌。では、1つ飛ばした「せ」は何かと言えば醤油で、醤油(あるいは正油)は昔、「せうゆ」と書いたからだ――とほとんどの料理の専門家が言うし、某大手醤油メーカーの広報担当者に聞いても、答えは同じだった。 しかし、それは勘違いである。醤油も正油も、歴史的仮名遣いによる正しい表記は「しやうゆ」であって、「せうゆ」ではない。それがなぜこうなってしまったのかと、三省堂の国語字典担当者に聞いたら、「言い出しっぺの単なる勘違いか、それとも、<さしすせそ>の語呂に当てはめたくて、無理にそう読ませたからじゃないですか?」と。「ドジョウを<どぜう>と書くのも変。本来なら<どじやう>ですからね」とも。 「斎藤」さんの「斎」は「斉」の旧字体だと思っている方も多かろうが、これも勘違い。「書斎」を「書斉」とは書かないし、「一斉」を「一斎」とは書かずに使い分けているように、「斎」は「心や身体を清める、部屋」の意味で、「斉」は「等しく、揃って」の意味。漢字が似ていて、読み方が同じだから、勘違いされたのだろう。 注意して聞くと、天気予報では「降水確率O(レイ)%」とは言っても、「O(ゼロ)%」とは言わないらしい。「レイ」でも「ゼロ」でも、同じだろう、と思うのは勘違い。「ゼロ」は「まったくないこと、無」を意味するが、「レイ」は「零細企業」「零細農家」などと使われるように「規模が小さい」の意味。だから、雨が「絶対に降らない」とは断言しにくい天気予報では、5%未満の可能性を残して「レイ%」と言うらしい。 まったく、いろんな勘違いがあるものだが、さて……。 入社間もないI君が、先輩社員から仕事の指示を受けた。「××市で、おおあんまきを作っている○○という会社へ行ってこい」「はい!」……それから小一時間後、I君から電話が入った。「会社が、見当たりません」「何言ってるんだ。おおあんまきの○○と言えば、その辺では誰でも知ってる有名な会社だぞ」「……大型のマッサージ器を作ってる会社、ですよねえ」「バカっ、饅頭の親戚の、大あん巻きだ!」 「あん巻き」を「按摩器」と勘違いしたI君は、それから20年後のいま、弊社では一番大きくて立派なデスクを前に、難しそうな顔をして、座っている。 |
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