2023年6月全国の繊維倒産集計
件数、負債額とも前年同月を上回る
- 発生件=21件
- 負債額=22億8000万円
2023年(令和5年)6月の全国繊維業者の倒産(負債額1000万円以上=整理・内整理含む)は21件で、前月比1件(5.0%)増加、前年同月比では4件(23.5%)増加した。
負債総額は22億8000万円で、前月比56億4900万円(71.2%)減少した一方、前年同月比では6億8100万円(42.6%)増となった。
負債額10億円以上及び5億円以上の倒産は発生せず、3億円以上も中根保(株)(東京都中央区、紳士カジュアルウエア製造、負債額4億4000万円)、(株)MA(東京都墨田区、婦人靴下製造、負債額3億円)の2件のみで、1億円未満が13件と全体の62%を占め、4月以降コロナ禍同様の小規模倒産中心の推移となっている。
中根保(株)はオリジナル、ライセンスの多数のブランドを展開し、大手カジュアルチェーンをはじめ全国の量販店や専門店に販路を構築。1997/3期には年商51億300万円を計上していたが、その後は減収傾向となり、利益も低調化して赤字決算を散発。過年度の不動産取得にかかる借入負担も重く経営が悪化した。このため不動産売却により金融債務の圧縮を進め、立て直しに取り組んだものの、2020/3期には年商7億3409万円にまで落ち込み、厳しい経営を強いられていた。こうしたところ、2021年4月に当社に関する怪文書が出回ったことで信用不安が高まり、2022年9月頃には実質的な事業を停止していた。
繊維業界の倒産は今のところ落ち着いた状況にある。しかし、他業種では堀正工業(株)(東京都品川区、ベアリング卸、負債額350億円)が複数の決算書を作成し、借入金額を過小に見せかけた粉飾決算が発覚して信用が大幅に低下、資金ショートし債務整理を弁護士に委任した。また、2017年東京国税局から消費税の不正還付申告で100億円の追徴課税を受けていた元免税店経営の(株)TMD(旧社名:宝田無線電機(株)、東京都千代田区、特別清算開始、負債額74億円)が破たんするなど、コロナ禍で問題を先送りしていた企業や不祥事が発覚して倒産するケースが目立つ。
コロナ5類の移行で行動制限がなくなり、人流が大幅に増加して景況感は回復し、当月も宝飾品や夏物衣料中心に百貨店なども堅調な売上推移となった。
しかし、雇調金特例措置の終了、ゼロゼロ融資の返済開始などを背景に、資金繰りがタイトな中小・零細企業が増加。さらに為替や各種コスト高の対応に追われており、今後も楽観視できない状況が続くものと見られる。
業種別では「小売商」10件、「ニット製品・洋品雑貨製造卸」「その他」各3件、「紳士・婦人・子供服・被服製造卸」「寝具・インテリア」各2件、「織物卸」1件。
原因別では、21件すべて「業績ジリ貧」だった。